BRIEFING.377(2015.10.27)

デュー・デリジェンス、ピア・チェックの次は・・・

日本が平成バブルの崩壊から立ち直りの道を模索しつつあった1990年代後半、不動産証券化に必要な手続きの一つとして導入された適正評価手続のことを「デュー・デリジェンス」と呼ぶ。日本版リアル・エステート・インベストメント・トラスト、すなわち今ではすっかりお馴染みとなったJリートが物件を取得する際に欠かせぬ作業である。

これらの不動産について詳細な、@法的調査、A経済的調査、B物理的調査の3つが必要とされる。既存の土地建物に対する調査・評価である。

Due は適正な・公正な、Diligence は勤勉さ・真面目さといったところか。

通常の宅地建物取引士による物件調査・価格査定や、不動産鑑定士による鑑定評価だけでは、投資家の求めに応じられないということである。しかしこれとて完璧ではなく、分からぬことは分からない。

その後2005年に構造計算書偽装事件(姉歯事件)が発覚したことは記憶に新しい。

これをきっかけに、建築基準法が改正され、第三者機関による構造審査が求められることになった。これを構造計算適合性判定制度と言い通称「ピア・チェック」と呼ぶ。

鉄筋コンクリート造なら高さ20m超、鉄骨造なら地上4階建以上、木造なら高さ13m超等の建物がその対象となる。

Peerは仲間・同僚、Checkはチェックである。つまり当人と同等以上の技術者に再チェックさせるという訳である。しかし屋上屋を架す感じは否めない。その上、施工段階での瑕疵や偽装には無力だ。

さて、横浜市で2007年新築の大型分譲マンションが傾いた。

事件の概要は省くが、データの偽装を意図的にやられればそれを後から見つけることは不可能と言うのが大方の専門家の意見である。

仮にこのマンションが賃貸であったとし、Jリートが取得しようと「デュー・デリジェンス」を行ったとしても、この偽装は見破れなかっただろう。また、着工前の「ピア・チェック」でも見破れなかったはずだ。今回求められるべきは施工中のチェックである。

では、新たな制度を作って施工監理者が正しく監理をしているか第二の監理者がチェックすることにするか・・・。いや、施工監理者が現場に常駐している訳ではないから、別途常駐の監視員を配置して現場の技術者や職人を監視することにするか・・・。その監視員を監督する人も必要か・・・。


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