BRIEFING.380(2015.12.07)

新築住宅の固定資産税減額と空家問題

税の特例による減免は、国税については租税特別措置法で、地方税については地方税法の附則に定められる。そしてこれらの多くは期限付きであり「平成28年3月31までの間に・・・された・・・にあっては・・・」といった規定になっている。

しかし、実際にその期限が近づくと同期間延長、しかも何度も何度もというケースが多い。一度勝ち取った減免措置は関連業界の既得権と化すのだろう。不動産・住宅業界にも延長が繰り返されてきた期限付き減免は多い。

そのうちの1つが「新築された住宅に対する固定資産税の減額」(地方税法附則第15条の6)である。

「平成28年3月31日までの間に新築された住宅」については「新たに固定資産税を課されることとなった年度から3年度分の固定資産税に限り、当該住宅に係る固定資産税額の1/2に相当する額を当該住宅に係る固定資産税額から控除するものとする。」とされている。「中高層耐火建築物」なら5年度分が1/2だ。

さて、今年度末で終わるはずのこの特例、早くも2年間延長(「平成30年3月31日までの間に・・・」と改正)が見込まれている。

上記新築住宅の特例の冒頭には「昭和38年1月2日から」という期首の定めがあり、この特例がそのころからあったことがうかがえる。団塊世代の子供部屋が必要となる頃で、日本中が住宅難の頃だ。その頃から何度延長されてきたのだろうか。

翻って今日、日本中が空家増加に手を焼き、新築住宅はもう十分。むしろ中古住宅の活用が望まれる時代である。新築住宅に特段の配慮は無用。むしろ中古住宅の取得促進を図るべきではなかろうか。

ならば「平成30年」ではなく「平成20年」と改正し、それを新たに取得した所有者に対し、減額措置を講ずるべきである。

国土交通省は本年8月、地方税を所管する総務省に「国土交通省税制改正要望事項」を提出している。その項目の第1番はこの減額の2年延長である。

一般社団法人不動産協会も本年9月「平成28年度税制改正要望」を公表したがやはり第1番目は同じである。耐震・省エネ・バリアフリー改修に係る固定資産税減額措置の延長・拡充も要望はしているが8番目で力の入れ方に差が見える。

本年5月に全面施行された空家等対策の推進に関する特別措置法では「特定空家」の敷地については、住宅用地の固資税・都計税の減免規定の対象外とする等、有害な空家についてはムチが加えられるようになってきた。

それに歩調を合わせて、利用すべき空家にはアメを与え、両面から空家問題解決を図るべきである。


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