BRIEFING.381(2015.12.14)

課税取引と非課税取引の狭間

消費税の軽減税率導入は決定的であるが、その対象になる取引か否かには、取引される財の種類のみならず、その財の消費の仕方(店内か店外か)や取引当事者の属性も関わっている。その経理事務の煩雑さを想像すると今からうんざりである。

それに比べれば、これまでの土地・住宅関連の課税・非課税の悩みはまだ序の口であったと言わねばならない。

消費税法第6条を受け、別表第一には消費税を課さない資産の譲渡等が列挙されている(余談だが「別表」と言いつつなぜか「表」でなく箇条書きである)。その別表第一の一には土地の譲渡・貸付が、十三には住宅の貸付が記されており、これらが原則非課税であることが分かる。

ただ現実にはこれだけでは判断できないことが多く、同法施行令第8条や第16条の2、及び同法基本通達第6章第1節や第13節に依らなければならない。

例えば、売却する宅地に庭木、石垣、祠(ほこら)があり、それらが宅地と一体として譲渡されるなら、これら取引はすべて非課税取引となる。が、庭木はいくら、庭石はいくらと価格が合意されていればその分については課税だろう。また、一体譲渡であっても、建物の敷地となりえない土地ならば、庭木等については課税と判断されるだろう。

野球場、テニスコート等の施設の使用は土地の使用を伴うことになるが、その貸付はすべて課税である。では、野球のできる広場はどうだろう。バックネットのみがある野原等だ。

未舗装の土地を駐車場として貸付けるのは非課税である。しかし舗装、フェンス、区画線などを整備して貸付ければ課税である。では、バラスを敷いただけならどうか、フェンスだけならどうか、石灰で区画線を引いただけならどうか。

1戸に1台が割り当てられている賃貸マンションの貸付はすべて非課税である。但し駐車場代が家賃と分離されておればその分については課税となる。では、車のない賃借人について駐車場代相当額を家賃から値引きする、となるとどうだろう。

店舗併用住宅家賃の住宅分は如何に? 家賃と役務提供の対価との区分は? そもそも住宅かどうかの判断規準は? 

序の口とは言え、土地の譲渡・貸付、住宅の貸付だけを見ても様々な論点がある。今後、食料品等の軽減税率の導入に伴い、その狭間をめぐる論点は正に無限である。


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