BRIEFING.384(2016.01.14)

耕作放棄地の固定資産税1.8倍に?

一定の勧告を受けた特定空家等の敷地に係る固定資産税は平成28年から6倍になる。周囲に迷惑となる空家を減らすためには有効な手段である。

この6倍という数字、不動産業界の方ならすぐに何のことかお分かりだろう。

小規模住宅用地(200u以下の部分)の固定資産税課税標準の特例(地方税法第349条の3の2)で、課税標準額が6分の1になるこの特例の適用が除外されることとなったのである。

ちなみに都市計画税(同法702条の3)は3分の1にしかならないから、両税の特例が適用除外となると、合計で5.1倍ということになる。算式は以下の通り。

(1.4%+0.3%)÷(1/6×1.4%+1/3×0.3%)=5.1

一方、耕作放棄地に対する固定資産税は、平成29年から1.8倍に引き上げられるという。農地の集約促進につなげるねらいだ。

だが、この1.8倍という数字、業界人でもピンとこない方が大半だろう。

実は1.8倍は、正確には55%の減額がなくなる(100/55≒1.818)ということである。ではこの55%とは・・・?

一般の農地の「適正な時価」は、売買実例価額から不正常要因に基づく価額を控除し、地形等の相違による修正を行った後、農地の限界収益修正率を乗じて求められる。

この限界収益修正率が、税務局長通達(昭和44年12月27日自治固第117号)で55%と定められている。

一般に農地の売買は、農業経営を可能とする規模の単位で行われるものではなく、10アール程度の切り売り、買い足しで行われるが、この買い足しは農業経営の効率を向上させるものであり、したがってこの買い足しに係る価格は、平均収益より高い限界収益を基礎に形成されることになる。

税務局長通達によれば、平均収益は限界収益の55%程度だという。

限界収益に基づく価格は、不動産鑑定評価の世界で言う「限定価格」ということができる。10アール単独ではあまり役に立たない。しかし元々隣接・近接して農地を所有する人は併合取得を前提にそれを高く評価する(増分価値が生ずる)という訳である。

売買実例に一律81.8%(100/55−1)の増分価値が生じていると仮定するのはどんぶり勘定に過ぎるが、限界収益修正率を乗ずること自体は、政策的軽減ではなく、適正な評価の一環なのである。

1/6を乗ずる小規模住宅用地の特例とは、性格を異にするものである。


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