BRIEFING.385(2016.02.01)

混乱する土砂災害警戒区域と危険箇所

「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」では、都道府県知事が土砂災害警戒区域(法第7条)及び特別警戒区域(法第9条)を指定し、その区域では警戒避難体制の整備や住宅の構造規制が行われることになる(BRIEFING.343参照)。

昨年10月にはその改正法が閣議決定され、11月に公布、本年1月18日に施行されたところである。

改正の概要は、(1)基礎調査制度の拡充(結果の公表義務付けと大臣による是正要求)、(2)警戒区域における警戒避難態勢整備、(3)警戒情報の提供義務付け等である。

ちなみに今回の改正で、従前の6条は7条に、8条は9条に順送りされている。

さて、土砂災害警戒区域とは「急傾斜地の崩壊、土石流、地滑りが発生した場合に住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域」(法第7条)である。そして同法第2条で、急傾斜地の崩壊(傾斜度が30度以上である土地が崩壊する自然現象)、土石流(山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって硫化する自然現象)、地滑り(土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動する自然現象)といった具合にそれぞれに括弧書きで説明がなされている。

知事が具体的に区域を公示する位置図、区域図には「自然現象の種類」としてこれらのいずれかが示されている。

一方、土砂災害警戒区域(及び特別警戒区域)以外に、これと混乱しやすい土砂災害危険箇所等がある。これは現地調査を行わずに主に図上から想定した箇所で、法的位置づけはなく、警戒区域等の指定前の基礎調査のもうひとつ前のものと言える。

しかしこれらには、急傾斜地崩壊危険箇所、土石流危険渓流、地すべり危険箇所といった種類別の明確な名称があり、何となく法律に基づく警戒区域(及び特別警戒区域)より具体的な調査をした結果かのような印象を与え、両制度の軽重を取り違えさせ兼ねない。

また県によっては「危険箇所」でなく「警戒箇所」と称してる場合もあり「警戒区域」との区別をより難しくしている。

両制度を整理する主なポイントは次の通りである。

●法律に基づくか基づかないか
●警戒区域か危険箇所(又は渓流)か
●現地調査か机上調査か
●1/2,500地形図使用か1/25,000地形図使用か

なお、基礎調査の結果、「危険箇所(渓流)」でなかったのに「警戒区域」に指定される場合もあり、「危険箇所(渓流)」だったのに「警戒区域」から外れる場合もあってますますややこしい。


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