BRIEFING.387(2016.02.24)

言うは易し「タワマン節税」対策

一棟の分譲マンションの各戸価格は、同一面積、同一仕様であっても、上階へいくほど高く、特にタワーマンションの最上階は1つ下階よりも相当に高い。

その割合は地域や周辺の状況にもよるが、最下階(通常2階か3階)に対して最上階は倍近いとも言われる。最上階と、眺望等にほとんど差がない一層下の階との差は、眺望等以外にステータスの様な物が付加された結果と考えられる。

階層の違いの他、方位、角部屋か否かといった位置の違いによっても価格差が生じるが、これらの差は効用比と呼ばれる。

一方、固定資産税や相続税に係る評価は、建物については共用部分を加算した床面積(評価証明書記載面積)の割合による按分、土地については登記されている敷地利用権の割合(多くは規約で専有床面積割合としている)による按分が基本である。

そうすると、建物についても土地についても効用比が全く考慮されていないことになる。土地については、規約で分譲価格を反映した割合を設定している場合もあるが、将来に渡って維持される割合ではないため、あまり採用されていない。この点、専有床面積割合は客観的・普遍的という点で好ましい。

ちなみに、敷地利用権割合は法定されておらず(あえて言えば民法に基づき全員平等)、実務上はマンション分譲会社が規約でこれを規定しておくのが通常である。また、ちなみに、建物の登記床面積は内法で計測することが法定されているのに、管理規約で定める敷地権利用割合は壁芯計測による専有床面積割合が多い。その理由は、管理規約作成の時点ではまだ登記床面積が正確に把握できないからであるが本論において大きな問題ではない。

問題は、課税上の不公平を如何になくすかである。管理規約で効用比を反映した敷地利用権割合を強制することも考えられるが、その割合が主観的・流動的である点は否めない。

さて、「タワマン節税」の手口は周知であろうから説明は避けるが、国税庁は、マンションの階層別価格差を勘案して実勢に即した評価をし、節税の道をふさごうと目論んでいるところである。確かにそうあるべきである。

がしかし、前述の通り、階層による価格差は地域や周辺の状況によって異なり、判断する人の主観にも関わってくる上、後に周辺の状況が変化した(たとえば富士山が見えたのに隣にもマンションが建って見えなくなった)時の対応も考えると難しい。

階層別価格差の源を、土地に求めるのか建物に求めるのかという議論も避けて通れない。さらに、そもそも一棟の価格の合計を各戸に按分という考え方でよいのかという疑問も湧く。

恣意性が介在しない公平・簡潔な評価ルールが求められる。言うは易いがその実行は難い。


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