BRIEFING.388(2016.03.14)
事業用定期借地権の3つの特約
定期借地権には、次の3種類がある。
(1)一般定期借地権(借地借家法22条)
(2)事業用定期借地権(借地借家法23条)
(3)建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)
さらに(2)には、30年以上50年未満(23条1項)の任意排除型と、10年以上30年未満(23条2項)の強制排除型がある。次の点が異なるため、契約書作成の際には十分注意しなければならない。なお公正証書によることはいずれでも必須だ。
●任意排除型・・以下の特約(本来は無効)が可能
@契約の更新なし
A建物の築造による存続期間の延長なし
B建物買取請求権なし
●強制排除型・・以下の規定は当然不適用
@借地権の存続期間(3条)
A借地権の更新後の期間(4条)
B借地契約の更新請求等(5条)
C借地権の更新拒絶の要件(6条)
D建物の再築による借地権の期間の延長(7条)
E借地契約の更新後の建物の滅失による解約等(8条)
F建物買取請求権(13条)
G借地契約の更新後の建物の再築の許可(18条)
前者なら3つの特約で「定期借地権」にすることが可能、後者なら当然に「定期借地権」と言えば分かりやすい。
では、前者の場合で、@〜Bの特約のうち1つまたは2つだけを付した契約は、「定期借地権」と呼べるか否かは別として有効だろうか。これには次の6種類が考えられる。
ア | イ | ウ | エ | オ | カ | |
@ | ● | ● | ● | |||
A | ● | ● | ● | |||
B | ● | ● | ● |
アは建物買取請求のみ認める、イは(法定期間内の)延長のみ認める、といったもので、あってもおかしくない契約だ。1つ欠けているからといって他の特約まで無効とする理由は見当たらない。有効と解すべきだろう。
ところで法23条の条文見出し(事業用定期借地権等)には「等」が付されている。これは平成20年の法改正前の「事業用借地権」を含んでいるからと思われるが、上記の@を欠いた契約はもはや「事業用定期借地権」と言うに違和感があるから、これも「等」に含めることにしてはどうか。