BRIEFING.39(2002.12.2)

置換原価の積極的採用

不動産の価格を求める3手法の内の1つ、原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、これに減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である。そして再調達原価とは、今同じ建物を再調達する、すなわちもう一度作ればいくらかかるかを想定した場合に必要な金額である。

これについて2つの考え方がある。

@使用資材等も同様のものを想定する方法
A同用途、同効用、同耐久性のものを想定する方法

後者は同等の有用性を持つものに置換えて再調達原価を求めることから置換原価と呼ばれ、「建設資材、工法等の変遷により、対象不動産の再調達原価を求めることが困難な場合には」この方法を採用することとされている。

ところでバブル期に建築されたオフィスビルには必要以上に高価な大理石が使用されていたり、華美な吹き抜けが設けられていたりといったものが見受けられる。そしてそれと同じものをもう一度作ろうとすれば今の建設物価であっても異常に高額となる。しかし現在その収益性はどうかといえば、通常の仕様のオフィスビルとさほど変わらない。

大規模な個人住宅もそうである。同じものを作ろうとすれば1億円かかるが、同等の有用性(数値化できないが)を持つのものならその半分でできるといったことがある。

原価法は費用性に着目した手法である。しかし費用性に拘泥する必要はない。費用性を重視しつつ市場性にも収益性にも留意すべき手法と理解する。

とすれば再調達原価を求めるに当たっては、たとえ原則的な方法で再調達原価を求めることが可能であったとしても、物理的に同じ建物であることにこだわらず、経済的に同じ建物を想定する、すなわちAの方法を積極的に採用すべきではないか


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