BRIEFING.396(2016.05.23)

1票の格差是正は「ふるさと投票」から

人口の首都圏一極集中の一方、地方ではその流出・減少に歯止めが掛からない。これ伴い衆議院議員選挙の「1票の格差」はいよいよ看過し得ない事態となり、政府もようやくその抜本改革に乗り出す見込みである。そこで導入されるのが「アダムス方式」である。

これにより、国勢調査を基準にした都道府県の人口比を反映しやすい議席配分となる。但し求められた数値の端数を切り上げとすることにより、人口の少ない都道府県にも最低1人は割り当てられることとなりそうだ。

さて、配分方法の適否は置くとして、人口の一極集中がネガティブに語られる中で、人口同様、議席も一極集中させるべきなのであろうか。

人口の一極集中が好ましいものではないとすれば、都会の票を軽くなるにまかせた方が、その是正の一助になる。「俺は1票が重い地方に残る。」「私は重い1票を求めて過疎地へ移住する」という人が出てくるかも知れないからだ。

「そんなことで居住地を決める奴はいない」という批判はあろう。確かにそうだろう。が、そうだとすると、本当は1票の格差など大した問題ではないということになる。しかも、自分の意思で、よりよい職業、収入、教育、出会い等を求めて1票の軽い都会へ引っ越すのだ。その上で「格差是正」を主張することに何か違和感を持つ方が多いのではないか。

それは、与えられた選挙区に問題があるからではなかろうか。

そこで「ふるさと納税」ならぬ「ふるさと投票」を提案する。投票権を、住民票を置く選挙区に限定して認めるのでなく、選択制で出身地の選挙区や育った選挙区、父母の故郷の選挙区ででも認める。東京に住む人が生まれ育った熊本で、あるいは、今は埼玉に住む江戸っ子が東京の投票権を選択してもよい。

自らの意思でとは言うものの、就職や転勤による引っ越しは半ば強制移住でもある。そのような居住地よりも自分の故郷、将来帰るかも知れない、また老後を過ごすかも知れない故郷こそ心配なのではないだろうか。知事選、市町村長選に適用してもよい。

そして、住民票とは別に、それぞれの国民が選択した投票権を置く選挙区の人口(投票権人口と呼ぶこととする)を基準にすれば「1票の格差」も緩和されるだろう。

今は当然ながら選挙区の選択ができない。できない上に与えられた1票が軽いと腹も立つが、問題はその軽重のみならず、選挙区の齟齬にもあるに違いない。

「ふるさと投票」に一考の余地はないだろうか。満足する選挙区で平等な1票(投票権人口を基礎に議席配分)を投じたいではないか。


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