BRIEFING.399(2016.06.24)
地積と単価
一戸建住宅用地の単価は、一般にその規模が小さいほど高いことが知られている。200uよりは150u、150uよりは100uの方が高いのである。それは総額が抑制されることで市場参加者が増加するためと考えられる。そうすると、一戸建住宅地域においては、自ずと区画の分割、小規模化が進むことが避けられず、実際、それは観察されることである。
しかし、区画の小規模化は、間口の狭小化でもあり、防災、衛生、景観等の面からも好ましくない。小規模化の進行は、個々の区画の単価を上昇させる反面、合成の誤謬により地域の環境劣化を招き、その地域の地価水準の下落にもつながりかねない。
そこで、都市計画、地区計画、建築協定等で敷地面積の最低限度を定めたり、区画の分割を禁止したりといった規制でそれに歯止めをかけている地域がある。
例えば東京都の世田谷区では、都市計画により第1種・第2種低層住宅専用地域においては、指定容積率によって、40%なら100u、50%なら80u、60%なら70uと最低限度を定めている。兵庫県芦屋市の超高級住宅地域、六麓荘町では地区計画で400uと定めている(BRIEFING.055、128参照)。
さて、このような規制がない場合、一戸建住宅用地の単価は、どの程度の地積で単価が最高となるのだろうか。200uでは大きい。100u位か。いや50u程度か。
正解は、都心か郊外か田舎か、また時代によっても異なると思われる。
次に、広い敷地を最適に(平均単価が最も高くなるよう)分筆する方法を考えてみる。
その土地の間口が十分に広ければ、羊羹を切るが如く適当な大きさに分筆すればよいが、短冊状の「鰻の寝床」がいくつもできれば、形状劣化(間口狭小)による単価下落効果が、規模縮小による単価上昇効果を上回ってしまう場合もある。
下表の例では、分筆後@の単価は分筆前の単価を上回ると予測できる。Aは@に比べてどうだろう。Bになると、形状劣化(間口狭小)による下落効果が、規模縮小による上昇効果を上回るだろう。
間口 | 奥行 | 地積 | 区画数 | |
分筆前 | 30.0m | 20m | 600u | 1区画 |
分筆後@ | 7.5m | 20m | 150u | 4区画 |
分筆後A | 6.0m | 20m | 120u | 5区画 |
分筆後B | 5.0m | 20m | 100u | 6区画 |
これらの効果を測定することは困難であるが、規模縮小による上昇効果は案外大きく侮れない。いわゆる旗竿分筆(BRIEFING.215参照)はその効果の大きさを示す好例である。間口2〜3mで奥に隣地に囲まれた四角い敷地がある。このような形状劣化を受け入れてでも、規模縮小を図る方が有利(平均単価が上がる)という判断があることが分かる。