BRIEFING.402(2016.07.21)

1000分の999の共有物分割

不動産の所有権移転登記の原因には「売買」「相続」「贈与」等があり、それは登記事項証明書等で確認することができる。それを見ていると、平成12年頃までのものに、1000分の1を「売買」で、その後すぐに1000分の999を「共有物分割」で移転している例が見受けられる。

「なぜこんな移転方法を?」と若い方はお思いだろうが、ベテラン業界人ならご存じのはずだ。「売買」と「共有物分割」との登録免許税の税率差を利用した節税手法である。「売買」1000分の50、「共有物分割」1000分の6(当時)でその差は大きかったのだ。

そこで、少しだけ「売買」で共有とし、残りの持分を「共有物分割」として移転するという訳だ。徹底している人は10000分の1だけ「売買」、やや遠慮気味の人は1000分の1、罪悪感のある人1000分の5といった感じだ。もちろん大多数の人は実体に従い全部「売買」を登記原因としていたのだが・・・。

これでは課税の公平・中立が保てない。

そこで税務当局は、平成12年4月から、租税特別措置法第84条の4でその適用範囲を限定し、この節税手法を禁じている。その後この規定は登録免許税法施行令第9条に移され、今に至っている。

現在は、原則としてその税率はいずれも1000分の20(租特法でH29年3月末までは1000分の15)であり、一定の「共有物分割」の場合なら1000分の4(登録免許税法別表第1第1項ニ)とされている。

さて、その施行令9条であるが、誠に難解で読みづらい。その第1項は次の通り。

「共有物である土地の移転の登記において、法第十七条第一項又は別表第一第一号(二)ロ若しくは(十二)ロ(2)の規定の適用がある場合におけるその共有物について有していた所有権の持分に応じた価額に対応する部分は、当該共有物の分割による所有権の持分の移転の登記に係る土地(以下この項において「対象土地」という。)につき当該登記(以下この項において「対象登記」という。)の直前に分筆による登記事項の変更の登記(以下この項において「分筆登記」という。)がされている場合であって当該対象登記が当該分筆登記に係る他の土地全部又は一部の所有権の持分の移転の登記(当該共有物の分割によるものに限る。以下この項において「他の持分移転登記」という。)と同時に申請されたときの当該対象土地の所有権の持分の移転に係る土地の価額のうち当該持分の価額に対応する部分とする。」

大まかに言うと、共有土地を、共有者の持分に見合うように分筆し、それぞれの単独所有になるよう同時に移転登記する場合(税率を軽減すべき本来の「共有物分割」)のみ、1000分の4ですよ、ということらしい。読んでそう理解できる人はいるだろうか。


BRIEFING目次へ戻る