BRIEFING.407(2016.09.15)

開発法と配分法における「付帯費用の控除」

更地の鑑定評価額は「面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等」においては、開発法による価格を、他の試算価格と比較考量して決定しなければならない。

開発法は、その大きい更地を「一体利用することが合理的」な場合には分譲マンション等を建築して分譲することを、「分割利用することが合理的」な場合には区画割りの上分譲することを、それぞれ想定し、その販売総額から通常の建物建築費相当額または通常の造成費相当額、及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して試算価格を求める手法である。

簡単に言うと(更地価格=販売総額−建築・造成費−付帯費用)となる。

なお、この場合の「更地価格」は開発前の価格であり、想定した分譲時点における「販売総額」の内訳としての「更地価格」ではないことに留意が必要である。

一方、配分法は、たとえば、土地建物等からなる不動産の取引価格から、土地の取引価格のみを求める方法で、土地以外の価格を控除、または土地の構成割合を乗じて、土地の価格を求める方法である。一般には控除する方法が多用されている。

そして、取引事例が投資用不動産等の取引事例である場合、取引価格に「付帯費用」と判断される金額が含まれている場合があり、これを取引価格から控除する必要がある。「付帯費用」には、@発注者が直接負担すべき通常の付帯費用(公共公益施設負担金、開発申請経費、建築確認申請費用、登記費用等)、A建物が竣工し使用可能な状態になるまでのコスト(借入金利、自己資本の配当率、発注者の開発リスク、発注者利益、販売費・広告宣伝費、土地の公租公課・地代、テナント募集費用等)がある。

式にすると(更地価格=取引価格−建物価格−付帯費用)となる。

なお、この場合の「更地価格」は開発後の価格であり、売買した時点における「取引価格」の内訳としての「更地価格」であることに留意が必要である。

ところで、売買された投資用不動産が、もし時を経ずに同額で他者に転売された場合、その内訳たる「更地価格」をどう判断すべきだろうか。転売者が負担も認識もしていない「付帯費用」をここでも控除することには違和感がある。

この違和感は、開発後も「付帯費用」が土地建物価格に溶け込まず別物とすること(付帯費用非溶け込み説)から生ずると考えられる。開発法の場合は、それが開発後の土地建物価格に溶け込むとしている(付帯費用溶け込み説)。

買主から見れば、投資用不動産は土地(償却不可)と建物(償却可)である。付帯費用をいくら費やしたかに興味はない。付帯費用非溶け込み説は、買主の視点を欠いている。

さらに憂慮すべきは、これが更地の取引価格を見えにくくしてしまうのではないかということである。市場で起きている大事を過小評価することにつながりかねない。


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