BRIEFING.408(2016.09.30)

株式公開買付けと分譲マンションの建替え(1)

格式の公開買付け、TOB(Take Over Bid)は、証券会社が代理人となって行われる公開会社買収手法のひとつである。大型のものは別として、小型のものは日常的に行われ、各証券会社はインターネット上でその情報を公開し、対象銘柄保有者からの応募を募っている。

それは、買付者が対象銘柄を、一定の期間、一定の株数、一定の価格で買取ることを宣言し、市場を通さずに不特定多数の対象銘柄保有者からこれを買取る制度である。

その価格は当然、市場の価格より高いプレミアム価格となる。そうでなければ誰も応募しないからである。

しかし、公開買付者にとっては、買取総額の予想が立て易く、予定の株数が集まらなければ全ての買取りを取り消すこともできるというメリットがある。また、全ての応募者に対して公平に報いることができ、応募者に疑心暗鬼(もっと高い価格で買ってもらった人もいるのでは・・・)を起こさせることもなく透明性が高い。

さて、老朽化した分譲マンションの建替えは、法制度の改正で若干容易にはなったものの、その成功への道のりは厳しい。特に容積に余裕のないマンションでは不可能に近い。遠い将来ではあるが、数百戸の区分所有者からなるタワーマンションにも老朽化は忍び寄る。

その出口戦略というべき抜本的方策の立案が急務である。

そこで、その方策として、公開買付けを応用した制度はできないだろうか。

一棟のマンションの各戸に公平に価格を付け、一定期間、応募者(売却者)を募るのである。価格は市場価格より若干高くする。そうして全戸買付けることができれば、買付者は、そのマンションを取壊し、その敷地を有効に使用することができる。一戸でも買付けできなかったら、買取りを取り消せばよい。ゴネ得に付き合う必要はない。

予想される問題点は・・・

@応募しない人が、応募した人から恨まれる。
A賃借人が同意しない場合がある。
B抵当権者が同意しない場合がある。
C個別交渉を申し入れてくる人がいる。
D各戸の公平な値付け(評価)が困難である。

次回、これらについて検討する。


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