BRIEFING.409(2016.10.06)

株式公開買付けと分譲マンションの建替え(2)

前回、老朽化した分譲マンションの出口戦略として、株式公開買付け制度の応用を提案したところである。その際、予想される問題点として、次の5つをあげた。

@応募しない人が応募した人から恨まれる。
A賃借人が同意しない場合がある。
B抵当権者が同意しない場合がある。
C個別交渉を申し入れてくる人がいる。
D各戸の公平な値付け(評価)が困難である。

@については応募しないのも正当な権利であることを全員に理解してもらうことで解決できる。Aについては所有者(賃貸人)に責任をもって明渡しをしてもらう。売却代金の一部を賃借人に支払うことでうまくいくのではないか。Bについては売却価格が市場価格より高いことを説明すれば理解してもらえるだろう。

Cについてはどうだろう。「ちょっと色を付けてくれればすぐにでも・・・」と申し出があったら・・・。しかし「分かりました。でもこのことは絶対に内緒で・・・」と受けては制度の根幹に関わる。一切受け付けない態度を貫くべきだ。公開買付け不成立もやむなし。想定内だ。

Dはどうだろうか。株式(価格はどれも同じ)のように簡単ではない。

専有面積の違いはもちろん、階数、方位等をどう反映するか。建物価値はほぼ0なんだから階数や方位は関係ないだろう、という考えもあろう。評価の物差しや価値観は様々である。加えて、受験生がいる、老人がいる、内装を更新したばかり、といった個別の諸事情もあろう。明渡しを3年間までなら猶予する等の工夫である程度解決できそうだが、評価額への不満はなくならないだろう。

完全無欠の値付け(評価)ができ、それに一律1割ほど加算した金額で全員が買付けに応募するのが理想だ。これは正当な「地上げ」としても有効で、市街地再整備の手法になるだろう。農地の集約にも用いることができよう。

また、公共用地の取得にも応用できる。公金で私人の土地を市場価格より高く買い上げることには問題もあるが、そもそも売る気のない人に「時価」で売ってもらおうとすることに無理があるし、今でもすでに「時価」より高い“公共用地取得相場”が形成されている地域があるやに聞く。

問題は完全無欠の値付け(評価)が可能か、である。それは手の届かない理想なのだろうか。いずれにせよ、分譲マンションの老朽化は止めることができない。


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