BRIEFING.412(2016.11.17)

中古マンション価格と修繕積立金残高

不動産の価格を形成する要因は、一般的要因、地域要因、個別的要因に分けられるが、マンション1戸(専有部分)の価格を形成する要因には、これらの他、地域要因と個別的要因の中間とも言うべき「一棟の建物及びその敷地」に係る要因もある。

ところで、中古マンションの購入を検討する場合、誰でも「一棟の建物及びその敷地」の状態を観察し、外壁にクラックはないか、タイルの剥がれはないか、屋上の劣化はないか、鉄部に錆はないか等、気にするものである。そしてこれらの修繕を終えたばかりならまずは安心である。

しかし、築15年目でこれらの修繕を終えたばかりで「これならよい」と思ったものの、修繕積立金が底をついていたならどうだろう。次の大規模修繕時(築30年頃)には、エレベーター、給排水管、玄関ドア(ドア本体は一般に専用使用権のある共用部分)等の更新も必要になってくると考えられる。今のままでは不安だ。今後、修繕積立金の増額ができなければ、マンションがスラム化してゆく可能性もある。

一方、今、外壁が傷んでいても、修繕積立金残高が十分にあり、大規模修繕を行ってもまだ修繕積立金が半分近く残る、というのなら安心だ。

国土交通省は、平成23年に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表している。そこには、修繕積立金の積立て方として、均等積立方式と段階増額積立方式が紹介されており、それぞれについて竣工から30年間の修繕積立金と修繕工事費の累計額等の推移がグラフで示されている。

均等積立方式では「築後30年間に必要な修繕工事費の戸当たりの総額522万円について、修繕積立金を30年間均等に月額14,500円(年額174,000円)積立てて確保する場合を想定」している。修繕工事費の累計額は、12年目と24年目で急増、両時点で積立金残高のおよそ7〜8割を費消するイメージである。そして30年目でまた急増し、積立金の累計と工事費の累計が一致(すなわち残高0円)するようになっている。30年目は残高0でよいかはともかく、積立金には余裕が欲しい。

個々の区分所有者の修繕積立金滞納と異なり、管理組合の財政悪化は気付きにくく厄介だ。

これらのことは、総会の議事録等で確認できるが、購入検討者が区分所有法33条2項の「利害関係人」としてその閲覧請求ができるか明確でない。しかし組合員(売主)から依頼を受けた宅建業者なら可能(マンション標準管理規約コメント)と解されるため、仲介業者に閲覧してもらうことは可能だろう。中には管理組合が借金をしているケースもある。

一方、本年3月、国土交通省が公表した「マンション管理情報の適切な整備・保管・開示に取り組む管理組合事例集」には、これらの情報を外部に積極的に開示し、資産価値の向上に努めている管理組合が紹介されており、今後の参考となる。

昨年以降、中古マンション価格が堅調である。しかし、中古の場合、管理組合の財政は様々であり、しかも外見からは知る由もない。


BRIEFING目次へ戻る