BRIEFING.414(2016.12.15)

「タワマン節税」対策、具体化へ

自由民主党総務会は、去る12月8日、平成29年度税制改正大綱を了承した。その中の1つに「居住用超高層建築物に係る課税の見直し」がある。具体的には、超高層マンション(高さ60m超)の固定資産税評価額を、取引実態に応じた階層の差異による補正率(階層別専有床面積補正率)によって補正しようというものである。

当コラム読者諸氏には、この改正がいわゆる「タワマン節税」への対応策である旨、説明するまでもないだろう。

「大綱」によると「居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加え」るという。

10÷39≒0.256であり、30階で約7.4%増し、40階でちょうど10%増し、50階で約12.6%増しとなる。分譲の実態から見ればかなり物足りない格差である。

しかし、細かいことを言い出せば、階層だけでなく、方位、眺望、住戸の形状なども考慮せねばならなくなる。「簡素」でかつ「今までよりは公平」なのだからよしとすべきだろう。

この「補正率」は、固定資産税・都市計画税の他、不動産取得税に適用される。「大綱」には明記されていないが、自ずと登録免許税にも適用されるものと思われる。

相続税については、土地は評価の基礎となる路線価が、固定資産税評価の路線価とは別物なので、適用されず、固定資産税評価額を準用する建物にのみ、適用されることとなるのではないだろうか。明らかになるのはこれからだ。

ところで、この「補正率」が土地にも建物にも適用されるか否かは「大綱」からは明らかでない。「居住用超高層建築物」というからには「建物」のみだろうか。もしそうであれば、格差の物足りなさは一段と大きくなる。

しかし、階層による価格差は、中古になれば新築分譲時に比べ一般に縮小すると言われる。そうすると、建物にのみ「補正率」を適用することにより、古くなれば(経年減点補正が進んで)自ずと格差の縮小が図られ、一般的傾向に沿う結果となって好ましい。なお、経年減価補正率の下限は0.2である。

最後にこの「タワマン節税」対応策について懸念すべき点を1つ挙げるとすると「平成30年度から新たに課税されることとなる」ものに限って適用するという点である。そうすると、既存のタワマン高層階は、節税手段として希少性が高まり、実勢価格と評価額との格差が一段と広がる可能性がある。既得権保護と公平性確保の調整が求められる。


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