BRIEFING.417(2017.01.12)

様々な選挙区と一票の格差

衆議院議員の定数は475人で、うち295人は小選挙区選出、180人が比例代表選出の議員である。参議院議員の定数は242人で、うち96人は比例代表選出、146人が選挙区選出の議員である。

そして、各選挙区の有権者はその選挙区内の選挙人名簿に登載されている人で、具体的には、原則としてその選挙区内の市町村に住民票のある人である。

このように、住む場所を基準とした選挙区割りは、当たり前のように思われているが、以前から年齢別選挙区(世代別選挙区)があってもよいのではないかとの議論が絶えない。半ば冗談かとも思えるが真剣に語る人も少なくない。

特に、健康保険、介護保険といった社会保険制度への不安や、財政赤字が増大する中、将来を担う若年層の意見を代弁する議員を選出する必要があるのではないか。

この他、所得別選挙区も考えられる。高所得者層にはそれなりの意見があるし、低所得者層にも主張があろう。中間層の話を聞いてその実態を知る必要もある。そのためには、各層の代表が国会の場で政府に質問し、必要なら法案を提出してゆくべきだ。

また、職業別選挙区、家族構成別選挙区等も考えられる。

サラリーマン、それも大企業と中小企業とでは立場が異なる。農業、自営業、会社役員等によって主張は違う。独身か、夫婦2人か、大家族かという差も大きい。

選挙区に地理的まとまりはないが、ネットを活用すれば街頭演説は不要、日本国中を回る必要もない。ただ、住民票のような明白な選挙区の線引きが難しい点は十分な検討が必要だ。また、選出された議員が全国民の代表(憲法43条)ではなく、ただの利益代表になってしまう心配もある。

さらに、一票の格差をなくすべく各選挙区の定数是正を定期的に行うとすれば、多数派がますます多数派になってしまうというおそれもある。たとえば、高齢者選挙区の有権者の増加に伴いその選挙区の議員定数も増員されたとすれば、国会は高齢者重視へと舵を切らざるを得なくなり、少子化が一段と進む。大企業サラリーマン選挙区の有権者の増加に伴いその選挙区の議員定数が増員されたとすれば、国会は大企業サラリーマン優遇に傾かざるを得なくなり、若者は皆、大企業サラリーマンを目指すようになる。

少数派は冷遇され、皆が多数派を目指す結果、多数派はますます多数派となり、一票の格差是正によって、より多くの議員定数を確保するようになる。

翻って、現実の選挙区はどうだろう。非現実的な選挙区の場合と同一には語れないが、一票の格差是正ばかりに義があるとは限らない。


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