BRIEFING.419(2017.01.26)

注目される住宅の再建築率

昔からあったデータであるが、近年、特に注目されるようになってきたものに「生産年齢人口」がある。15歳未満を「年少人口」、65歳以上を「老年人口」と言い、その間の15歳以上65歳未満の人口のことである。

昨年10月には、平成27年国勢調査人口等基本集計結果に基づく生産年齢人口及びその割合が公表されている。それによると平成27年10月1日時点の生産年齢人口割合は60.7%で5年前の63.8%から3.1ポイントの減少となっている。年少人口が減り、老年人口が増加していることも考え合わせると深刻な問題である。

この他、空き家率も近年、注目が集まっている。総住宅数に占める空き家の割合である。

平成25年住宅・土地統計調査によると、平成25年10月1日時点の全国の空き家率は13.5%で5年前の13.1%から0.4ポイント上昇している。増加戸数の8割近くは一戸建住宅で、その中でも「賃貸用の住宅」、「売却用の住宅」、「二次的住宅」(別荘等)の3区分以外の「その他の住宅」の増加が特に著しい。これには長期にわたって不在、取壊し予定等の住宅が含まれ、防犯、防災、衛生、景観等の面で問題の多い空き家である。

さて、本年注目を集めつつあるのが「再建築率」である。「再建築」とは「既存の住宅の全部又は一部を除却し、引き続き当該敷地内において住宅を着工すること」であり、全新設住宅着工戸数に占める、再建築に係る新設住宅着工戸数の割合が「再建築率」である。事務所・工場が住宅に建て替えられる場合は、これに含まれない。

平成26年度分の住宅着工統計によると、平成26年度の再建築率は9.1%で前年度の10.5%より1.4ポイント減少している。5年前の11.6%と比べると2.5ポイントもの減少である。

さて、再建築率の減少をどう評価するかには、若干の説明が必要である。

新設住宅を着工場所によって2分類すると、住宅が今まで、@建っていた場所に建てられるものと、A建っていなかった場所に建てられるものとに分けることができる。@ばかりだと市街地の範囲が広がることはない。一方、Aばかりだと、今まで市街地でなかった所が市街地になってゆくと考えられる。そしてその多くは(開発許可を受けた)市街化調整区域であろう。市街化区域の工場跡地に住宅が建ってゆく場合も多いだろう。

そうすると、既成市街地で住宅の建替えが進まない一方、周辺の農地・林地が虫食い的に住宅地化され、用途が混在化し、広範囲にまばらに住宅地の広がる都市の姿が見えてくる。それは、空き家の増加、農・工・住の混在、都市インフラ効率の悪化という弊害をもたらすだろう。さらに、地盤が軟弱であったり、土砂災害の危険に晒される住宅が増加する可能性も高い。徒歩と公共交通機関による買物や通学・通院が困難な地域も増える。

政府は「コンパクトシティ+ネットワーク」を重点的施策として掲げている。その進展の具合を知る指標の1つが再建築率だとすれば、その実現は遠のくばかりである。今後も注目すべきデータである。


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