BRIEFING.42(2003.1.16)

永久還元における減価償却費の意義(1)

収益還元法の1つ、直接還元法は、次の式で表される。

 P(収益価格)=a(1期間の純収益)/R(還元利回り)

DCF法においても復帰価格は主に同様の方法で求められる。これらの場合の純収益には建物の減価償却費を控除したものとしていないものとがあり、それに応じた還元利回りを採用することとされているが、実務上多くは控除した純収益を採用しているものと思われる。この場合の減価償却費の意義については次のように考えられる。

●単年度の純収益が永久に続くものと想定することとなるため、将来の建物価値の逓減・消滅(それは純収益の逓減・消滅でもある)を考慮して当該年度の純収益を下方修正してやる必要がある。純収益の標準化作業と言えよう。

●寿命のある建物の建替えを永久に繰り返し、今の純収益を永久に維持してゆくと想定し、そのために費用を積立てておく必要がある。再築費の積立てと言えよう。

●毎年減価償却費相当額の投資をすることにより今の純収益を永久に維持してゆくと想定し、そのために毎年の支出として計上する必要がある。常時投資の想定と言えよう。

●建物への初期投資を各年度の損益計算に配分し反映させてやる必要がある。企業会計原則の減価償却に準じた考えと言えよう。

これらを、@純収益標準化説、A再築費積立て説、B常時投資想定説、C会計原則準拠説、と呼ぼう。@ABは、いずれも超長期的に継続投資を繰り返して永久に維持しうる純収益を見い出そうとする作業(まとめて永久的純収益把握説と呼ぼう)という意味で類似しており、Cのみは「永久」ということが考慮されていない点で大きく異なる。不動産の構成要素に土地(永久的と考えられる)が含まれている場合の不動産鑑定評価においては、Cは否定すべきである。

さて、永久的純収益把握説のうち、@は永久に純収益を維持してゆく方法が具体的に想定されていない点で劣る。Bは想定されているものの現実的な想定でない点で劣る。Aの想定が最も妥当と言えよう。

しかしAについても様々な疑問や不都合があり、これについては次回考えてみる。


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