BRIEFING.421(2017.02.08)

税制による副作用

税金の制度や税率の改正は、ある一定の目的を持って行われる。それは、税収の確保の他、特定の業種の保護・育成、社会のあるべき姿への誘導等である。

ところが、その主たる目的以外に、副作用とも言える効果が見られる場合がある。不動産関連で近年見られた、あるいは今も見られる副作用には次の様なものがある。

(1)消費税・地方消費税の税率アップ
施行までに大きな買い物、特に住宅を取得しようとする個人が増加し、GDPを押し上げる。駆け込み需要である。しかしこれは需要の先食いで、施行後にはその反動で長期に渡り住宅需要が停滞する。なお、10%への増税は平成31年10月の予定である。

(2)相続税の基礎控除額ダウン
相続税法上の評価額、中でも不動産の評価額を下げる行動が増加した。具体的には、貸家の建築である。そのからくりについては皆様ご承知であろうから説明は省く。平成27年の相続分から基礎控除が下げられたが、さすがに相続の駆け込みは見られなかった。

(3)小規模住宅用地の固資税・都計税の特例
住宅用地の固定資産税・都市計画税は、非住宅用地に比べ相当に軽減されている。特に200u以内の部分(小規模住宅用地)については大きく軽減されている。これについても、当コラム読者の皆様方には釈迦に説法となるので、解説は省かせていただく。さて、その副作用は空き家の放置である。住んでいなくても住宅用地ならこの軽減の対象となる。かなり朽廃していても対象とされているようである。

「上に政策あれば下に対策あり」ということであろう。

一方、生じている副作用を抑えるための改正として次の様なものが挙げられる。

(4)超高層マンションの階層別補正の導入
まだ詳細は明らかになっていないがタワーマンションの高層階を利用した「タワマン節税」の行き過ぎを防ごうというもの。これも皆様よくご存じであろうから説明は省略させていただくが、住み心地や眺望といった実際の効用に加え、節税に利用できるという効用が加わって、高層階は極端な高値となっている。税制改正大綱から読み取れる範囲では、その効果は些少と思われるが、節税目的での需要を減少させるものと思われる。

(5)事業用資産の買換特例に係る土地等の最低面積設定
所有期間10年超の事業用資産の買換特例において、買換資産の土地等の面積に、特に制限はなかったが、平成24年4月からは300u以上のものとされている。それまでは、小規模な土地への買換えによりペンシルビルが増加するという副作用があったが、これを防いで土地の有効利用を促進しようという趣旨。

きめ細かな対応が望まれるものの、煩雑な税制もまた困ったものである。


BRIEFING目次へ戻る