BRIEFING.426(2017.03.30)

今年の地価公示は「ホテル開発公示」

地価公示法に基づき、平成29年1月1日現在の標準地の価格が官報公示された。

それによると、全国平均の対前年比で、住宅地が0.0%(前年は▲0.2%)、商業地が+1.4%(前年は+0.9%)で、一昨年の商業地に続き住宅地も下げ止まったことが分かった。住宅地の変動率は、厳密には+0.02%で、9年ぶりの上昇と言える。

三大都市圏で見てみると、住宅地は+0.5%(前年も+0.5%)、商業地は+3.3%(前年は+2.9%)となっている。住宅地では前年並みの小幅上昇、商業地では上昇基調が強まっている。

地方圏では、住宅地で▲0.4%(前年は▲0.7%)、商業地で▲0.1%(前年は▲1.5%)とまだ下落が続いているものの、いずれも下落幅は縮小している。但し地方圏の中でも、地方中枢都市(札幌・仙台・広島・福岡の各市)では商業地・住宅地のいずれでも三大都市圏を大きく上回る上昇が見られる。

上昇率の5位までを見てみると、住宅地では4位までを地下鉄開業効果の続く仙台市若林区の地点が占めた。5位は東京都港区南麻布4丁目だ。商業地は大阪市中央区・北区の道頓堀、宗右衛門町、小松原町、心斎橋筋、茶屋町の5地点が占めた。

価格の上位は、住宅地では東京都港区六番町で375万円/u、商業地では中央区銀座4丁目で5,050万円であった。

なお、福島第1原発事故に伴う避難指示区域内の12地点は調査を休止している。

変動の主な理由としては、低金利、住宅ローン減税、堅調な事務所需要に加え、相続税対策としての賃貸物件取得積極化、インバウンド需要に対応するホテル・店舗用地の取得合戦等が上げられる。民泊を想定した土地需要も感じられる。中でも買い負けないのがホテルで、立地で競合するマンション開発業者はついてゆけないという。

そこで今年の地価公示を「ホテル開発公示」と名付ける。

近年の地価公示については次の通りである。右はその前年の主な不動産関連事項。それ以前についてはBRIEFING.329194072をご参照いただきたい。

平成29(2017)年 ホテル開発公示・・・・立地適正化計画。所有者不明地。
平成28(2016)年 爆買い公示・・・・・・タワマン節税。民泊。杭データ。
平成27(2015)年 インバウンド公示・・・アジアマネー。空家。r<g。
平成26(2014)年 緩和マネー公示・・・・物流不動産。国家戦略特区。
平成25(2013)年 アベノミクス公示・・・日本再生戦略。メガソーラー。


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