BRIEFING.427(2017.04.17)

選択すべきは低い利回りの物件か高い利回りの物件か?

不動産の還元利回りは、総収益(または純収益)を価格で除したものであり、その不動産の収益性や安定性を示すものである。

この利回りには、期待利回りと取引利回りがあり、日本不動産研究所の「不動産投資家調査」では次の様に定義している(不動産鑑定評価基準でいう期待利回りとは異なる概念である)。

●期待利回り・・投資の価値判断(計算)に使われる還元利回り。
●取引利回り・・市場での還元利回り。

前者は「各投資家が期待する採算性に基づく利回り」、後者は「投資家が実際の市場を観察して想定する利回り」と言うことができる。

さらに両利回りは、粗利回り(表面利回り、グロス利回り)と、維持管理費等の総費用を考慮した純収益利回り(ネット利回り)に分けられ、後者については、以下の収益や費用を含む場合と含まない場合がある。特にABを含むか否かは、利回りに及ぼす影響が大きいため、利回りを比較検討する場合に留意が必要である。

@一時金(敷金等)の運用益
A減価償却費
B資本的支出

また、テナントの入れ替え等に際しやむを得ず生ずる空室(5%前後)についても、そこから生ずる賃料等について、次の様に取り扱いが異なる場合があるので留意しなければならない。

@賃料等があるものと想定して収益を計上する。
A賃料等は入ってこないのだから収益は計上しない。

@の場合は、他方で同額の空室損失相当額を計上(両建て)しておれば、Aと同じ結果となり問題ないが、@でありつつこれを計上していない場合は要注意だ。収益物件の広告に「想定利回り」(100%稼働を想定)とあるのはこれである。この様な利回りは、利回りの一類型というよりは誤りと言ってもよい。実際の空室率が高い場合には、想定した賃料の妥当性から疑う必要がある。

ところで、投資家が選択すべきは、低い利回りの物件だろうか、高い利回りの物件だろうか。その答えは、低い利回りの物件を高い利回りで買え、ということだろう。想定できるその方法は次の2つに分けられる。

@低い利回りの物件を値切って安く買う(分母が下がって利回りが上がる)。
A低い利回りの物件を買ってから収益を向上させる(分子が上がって利回りも上がる)。

実際には、市場に多くの買手がいるため@のようにうまくはいかない。また、自分に特別な才能がない限りAも難しい。プロの投資家の腕の見せ所である。


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