BRIEFING.429(2017.05.01)

分譲マンションの価格の比準方法

土地の取引事例に係る取引価格から比準して、対象土地の価格を求める場合、不動産鑑定評価においては、通常次の手順で行う。

@事例の価格を、一旦その地域における標準的な土地の価格に変換(標準化補正)
Aその価格を、対象土地の存する地域における標準的な土地の価格に変換(地域要因比較)
Bその価格を、対象土地の価格に変換(個別的要因比較)

これは、煩雑で手間が掛かるようであるが、実は誰でもが頭の中で行っている比準方法なのである。すなわち、地域同士の価格水準の比較(相場の比較)と、地域内での個別性の比較を分けて行っているということである。

たとえば、A地域のa土地(たとえば三角形)とB地域のb土地(たとえば南東角の整形地)の価格を比較する場合、AB両地域の価格水準の比較(どちらがどの程度高いか)と、それぞれの地域内におけるその土地の位置付け(標準よりどの程度安いか高いか)とを、左下図の通り別々に考える(間接比準)はずである。直接の比較は返ってやり難い。

しかし、一戸建住宅地域の中のマンション用地の価格を、同様の土地の価格と比較する場合、それを一旦標準的である一戸建て住宅用地の価格に直して価格水準比較の後、またその価格を大規模画地の価格に変換するというのは、いかがなものか。この場合は右下図の如く考える(直接比準)方がやり易い。

a土地 b土地
 ↓  ↑
A地域 B地域
a土地 b土地
   
A地域 B地域

間接比準は誤差の蓄積による精度の低下、直接比準は各段階での価格水準の確認ができないという欠点がある。

では、一棟の分譲マンションの中の1戸の価格を比準して求める場合はどうだろう。

α住戸 β住戸
 ↓  ↑
aマンション bマンション
 ↓  ↑
A地域 B地域
 
 


 

上図の3段階比準の他、α→a→b→β(又はα→A→B→β)の2段階比準、α→βの1段階比準が考えられる。

3段階なら、同一棟内の価格水準、地域内の価格水準を、それぞれ確認してゆくことができる。2段階ならそのいずれかだ。一方、段階が多いほど誤差の蓄積が生ずるという問題もある。

各段階で十分な事例の収集が可能か(すなわち相場が形成されているか)等によって使い分ける必要がありそうだ。


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