BRIEFING.433(2017.06.01)
空家・空地問題と仲介手数料の適正化
自民党政務調査会中古住宅市場活性化小委員会は、平成29年5月16日「空き家・空き地の利用・流通の促進に関する提言(中間とりまとめ)」を公表した。サブタイトルは「空き家・空き地問題を官民総力戦で解決する」。不動産、住宅、金融、鉄道、地方公共団体、学識経験者、NPO、関係省庁など、幅広い分野の有識者に対し「12回ものヒアリングを精力的に行い、議論を重ねてきた」結果である。
その中で特に目を引くのが「宅地建物取引業者による空き家等の媒介の費用に係る負担の適正化」である。具体的には、宅建業法に基づく国土交通省告示により定められた報酬(いわゆる仲介手数料)の低額部分をもっと上げてやろうじゃないかという趣旨と思われる。
この提言は「空き家等の低額物件を流通する際の媒介コストの負担が障害となって、宅地建物取引業者が物件の取り扱いを忌避する傾向にある」と指摘し、「空き家等の流通の促進に向け、流通コスト全体のあり方にも留意しつつ、宅地建物取引業者による空き家等の媒介の費用に掛かる負担の適正化を図るべき」としている。
空家・空地は取引価格が安いため、それに従って宅建業者が受け取れる報酬の上限も安くなる。そうすると宅建業者にとってその仲介は、面白くない仕事となる。
しかし、空家・空地に関わっている時間があれば高額物件の仲介に時間を割きたい、という気持ちは正当なもので、責めることはできまい。
同小委員会は、2年前の平成27年5月26日にも「中古住宅市場活性化に向けた提言」を公表しているがそれにはなかった事柄である。その時の提言では、宅建業者による「囲い込み」(確かにルール違反である)や、「20年で一律価値ゼロ」の市場慣行を批判し、宅建業者を悪者扱いしているかのような記述も目立っただけに画期的と言える。
流通最前線に立つ者を叱ることも必要だが、インセンティブを与えて協力してもらうよう導くのも政治・行政の役目であろう。
前述のサブタイトルにも、宅建業者の「負担の適正化」に言及するに至った姿勢・背景のようなものが窺える。「12回ものヒアリングを精力的に」行った成果と言ってよいだろう。
都心の中古マンション(1億円とする)と、地方都市郊外の空家(600万円とする)の仲介手数料は次の通りとなる。これでは誰も後者を扱おうとは思うまい。
●100,000,000円×3%+60,000円=3,060,000円(税抜き)
● 6,000,000円×3%+60,000円= 240,000円(税抜き)
なお、平成28年6月30日の当コラム・BRIEFING.400「仲介手数料の料率見直しで空家の流通促進を」では、すでにこのことを指摘・提言しているので参照願いたい。