BRIEFING.434(2017.06.08)
不動産鑑定評価額と消費税(1)
不動産鑑定評価額に消費税が含まれているか否かと問われれば、答えは否である。しかし不動産鑑定評価基準にはその旨、明記されておらず、それに関しいくつかの問題点が指摘されている。
消費税(地方消費税含む。以下同じ)率が5%の時代ならともかく、8%、ましてや10%ともなれば、その扱いが不動産鑑定評価額に及ぼす影響が無視できないため、これまで明確でなかったその扱いを整理しておく必要がある。
今回はまず、不動産に係る課税取引と非課税取引を整理する。次回はその所有者(売主・貸主)が課税事業者か否か(免税事業者等か)による違いにも着目し、さらに次々回は消費税抜きの鑑定評価額を求める際の論点を指摘してみる。
まず、消費税法別表第一(第6条関係)に示された非課税取引のうち、不動産に係るものを見ておく。不動産に係る非課税取引は次の通り。
@土地の譲渡及び貸付け
土地の譲渡には借地権の譲渡も含む。
土地の貸付けには1ヶ月未満のものやアスファルト敷き駐車場等は含まない。
A住宅の貸付け
契約で居住の用であることが明らかなもののみ。
表にまとめると次の通り。
貸付け (賃貸借) |
譲渡(売買) | |||
土地 部分 |
建物・ 構築物部分 |
|||
土地 |
土地 | 非課税 | 非課税 | − |
駐車場等 | 課税 | 課税 | ||
建物及び その敷地 |
住宅 | 非課税 | 非課税 | 課税 |
住宅以外 | 課税 |
建物は通常土地(敷地)と一緒に売買されるところ、その価格を土地建物に分け、建物部分についてのみ課税取引としている。用途が住宅でも同じだ。
一方、建物の賃貸借(実質的には「建物及びその敷地」の賃貸借)については、その賃料を土地建物に分けず、全部課税取引とし、但しその用途が住宅なら全部非課税取引という訳だ。
譲渡(売買)と貸付け(賃貸借)とで扱いが異なるため複雑である。