BRIEFING.435(2017.06.16)

不動産鑑定評価額と消費税(2)

前回、不動産取引に係る消費税を複雑にしている原因として、譲渡(売買)と貸付け(賃貸借)とで、課税・非課税の扱いが異なることを指摘した。それに加え、所有者(売主・貸主)が課税事業者か免税事業者等(免税事業者及び事業者でない個人)か、という問題もある。

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は免税事業者(課税事業者選択も可)であり、消費税の納税義務が免除される。事業者でない個人も納税義務はない。

しかし、免税事業者等と言えども、税務署に申告納付する義務がないだけで、仕入れに係る消費税の負担を拒むことはできない。したがって課税取引によって仕入れた資産を譲渡する場合には、その価格に消費税相当額を織り込まなくてはならない。その場合、消費税は本体価格に内包され、表示されることはないものの、買手としては(その取引が課税取引なら)自動的に総額の8/108を消費税と認識することとなる。

問題となるのは、不動産鑑定評価額に基づいて、所有者(売主)が免税事業者等である不動産を取得する場合(建物について)別途消費税を払わねばならないかである。所有者(売主)が課税事業者なら(建物について)別途消費税なのに、たまたま免税事業者等なら不要(消費税込み)ということでよいのだろうか。考え方は次の2つだろう。

@建物価格の8/100の消費税が別途必要(免税事業者の税別説)
A建物価格の8/108は消費税と認識できる(免税事業者の税込説)

本来、対象不動産の所有者が、課税事業者か免税事業者等かは、外観からは知る由もなくその価格に影響を及ぼすものではない。そうすると、たまたま所有者が課税事業者だったなら別途消費税、免税事業者等なら必要ない、というのではおかしい。消費税転嫁対策特別措置法に照らしても@説だろう。免税事業者だからと言って消費税相当額の支払いを拒むのは同法の禁ずる「買いたたき」に相当する。

これに対しA説の言い分は、免税事業者が負担した消費税は本体価格に織り込まれており、それに加えて(納税義務のない)消費税の別途加算は必要ないといったところか。

特に個人所有の住宅を鑑定評価額で取得する際、別途消費税では違和感がある。しかし鑑定評価額が税別で求められている以上、所有者が免税事業者であっても事業者でない個人であっても別途消費税(@説)でよいだろう。

不動産鑑定評価基準に明確な記載はないものの、鑑定評価によって求めるべき価格が税別であることに争いはない。次回は、税別の評価額を求めるために、鑑定評価手法の各段階で留意すべきことを見てゆく。


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