BRIEFING.436(2017.06.22)

不動産鑑定評価額と消費税(3)

消費税別の鑑定評価額を求めるにあたり問題となるのは、非課税売上(土地の譲渡、住宅の貸付)に対応する課税仕入れに係る消費税の扱いである。以下の具体例で考えてみる。

T.土地の価格を求める場合

(1)原価法
「国有財産評価基準」(財務省理財局長通知)によると「土地の造成費等課税対象となる役務の提供に係る経費を考慮するときは、当該経費等相当額は消費税相当額(中略)を含めた額による」とされている。その趣旨は、非課税売上(土地の譲渡)に対応する課税仕入れに係る消費税は本体価格に織り込みなさいということと思料する。仕入税額控除の「個別対応方式」に準拠した妥当な取り扱いと評価できる。

(2)収益還元法(土地残余法)
想定する建物の設計監理料、建築費、修繕費、維持管理費等を税抜きとすべきことに異論はなかろう。日本不動産鑑定士協会連合会の「証券化対象不動産の鑑定評価に関する実務指針」も「原則として収益及び費用いずれにおいても計上しない」と述べている。だが、想定建物が賃貸住宅の場合もそれでよいのか、土地の造成が必要だった場合はどうか、という疑問がある。その消費税を含めると収益価格は下がり積算価格は上がり、実に悩ましい。

(3)取引事例比較法
造成費や古家除却費を考慮して標準化補正や個別的要因比較の格差率を査定する場合、それらの役務に係る消費税を考慮すべきか否かが問題となる。(1)の考え方に倣えば税込みということになる。

U.住宅の賃料を求める場合

(1)積算法
基礎価格を求める際の建築費等、及び必要諸経費等を求める際の修繕費等、これらの課税仕入れに係る消費税の問題がある。Tの(1)の「個別対応方式」準拠説に倣うか、Tの(2)に従い「いずれにおいても計上しない」か・・・。

(2)収益分析法
具体的手法が確立されておらず実務上もほとんど採用されない手法であるため省略する。

(3)賃貸事例比較法
事例に係る賃料に消費税は加算されていないから、それとの比較に依って求められる賃料も当然にそれと同じである。

以上の疑問は整理が行われないまま鑑定評価の実務は日々行われている。その現実には危機感を持たねばならない。同業諸氏の他、各界のお知恵を拝借し、税率が10%になるまでにはこのもやもやを払拭したい。


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