BRIEFING.443(2017.09.14)

売買仲介へのAD導入で空家市場活性化を

空家の取引活性化に向けて、国土交通省は仲介手数料の上限緩和を検討中だ。

宅地建物取引業者が宅地建物の売買・交換の媒介(仲介)に関して請求できる報酬の額の上限は、国土交通省の告示で以下の通り定められている。左は売買代金(消費税別)、右は報酬(消費税込)である。概ね売買代金に比例して報酬も上がる仕組みだ。

200万円以下の金額 100分の5.4
200万円を超えて400万円以下の金額 100分の4.32
400万円を超える金額 100分の3.24

ところが売買価格の安い空家の媒介報酬は低く、加えて遠隔地であることが多いため物件の調査や案内に費用がかさみ、成約にも至りにくい(成功報酬である)ため、業者は空家の仲介に積極的ではない。低額部分の報酬が若干厚くなっている程度では割に合わないのだ。かくして空家は放置されることとなる。

だが商売になると分かれば、宅建業者は物件の掘り起こしに動くはずである。空家所有者としても、支払う報酬が高くなっても売れてくれればよしと考えているのではないか。これに関してはBRIEFING.433400で指摘したところである。

新聞報道によると、国交省の告示改正案は、400万円以下の空家取引を対象に、現状調査等の経費の請求を認めるという。しかし媒介報酬との合計が18万円以内でないとダメだという。

そうすると、追加できる請求額は、売買代金200万円の物件で72,000円、400万円の物件なら50,400円に過ぎず、400万円超なら追加はない。これではインセンティブにならない。

この点、賃貸借の仲介の世界は(怒られるかも知れないが)合理的である。

前述の告示によると、宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(消費税込)の合計額は「当該宅地又は建物の借賃の1月分の1.08倍」以内とされており、居住の用に供する建物の賃貸借の場合は依頼者の一方から受けることのできる報酬の額(消費税込)は「依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の0.54倍」以内とされている。つまり、双方から計1ヶ月分で、住宅の場合は一方から半月分以上はダメという訳だ。

しかし、実務上は、例外的に認められる「依頼者の依頼によって行う広告の料金」を媒介報酬とは別に取っている場合が多い。具体的には、賃借人から(承諾を得て)1ヶ月分、賃貸人から(依頼された広告の料金として)1ヶ月分、といった具合だ。しかも広告料の実費とは無関係にだ。これを業界ではAD物件と呼び、広告料が2ヶ月分、3ヶ月分のこともある。グレーな世界だが、成約に手間のかかる物件にはそれ相応の報酬を払うのが道理だ。放置されている空室が有効に利用されるなら社会的にも有意義である。

そこでこの際、AD物件を明確に規定し、売買に関しても積極的に認めてはどうだろうか。「広告料」で印象が悪いなら「コンサル料」でもよい。空家市場活性化への近道である。


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