BRIEFING.445(2017.09.28)

分割併合で見えてくる限定価格の本質(1)

不動産鑑定評価における限定価格については、当コラム読者諸氏にとって説明するまでもなかろう。しかしよく見かける限定価格についての説明は、隣接地を丸ごと併合(以下、一括併合という)するケースばかりを取り上げ、その正常価格に増分価値のうちのいくらを上乗せするかという話が中心になっている。

でも、それは一括併合の場合に限っての話であり、それだけでは限定価格の本質を見失ってしまう可能性がある。実務上、一括併合よりは、隣接地の一部を分割して併合(以下、分割併合という)するケースの方が多いと思われ、分割併合を取り上げて説明すべきである。それにより、一括併合は分割併合の特殊なケースであることが分かってくる。

以下、分割併合の例を挙げて、増分価値、限定価格の本質に迫る。

まず背中合わせの四角い2画地を想定する。A地は表通り、B地は裏通りに面し、地積等は表@の通りとする。B地のA地に接する部分を帯状に10u分割し、A地に併合すると、表Aの通りとなる。奥行に若干増減が生ずるが両地とも単価に影響がないものとした。

@取引前
  間口×奥行 地積 単価 総額
A地 10m×10m 100u 40万円/u 4,000万円
B地 10m×20m 200u 15万円/u 3,000万円
300u 23万円/u 7,000万円
 
A分割併合後
  間口×奥行 地積 単価 総額
A地 10m×11m 110u 40万円/u 4,400万円
B地 10m×19m 190u 15万円/u 2,850万円
300u 24万円/u 7,250万円

これにより生じる増分価値は(7,250万円−7,000万円=250万円)である。それはA地所有者にとってのB地買入限度額(4,400万円−4,000万円=400万円)とB地所有者にとってのA地売却限度額(3,000万円−2,850万円=150万円)との差でもある。

10uについて単価が上がった分(40万円/u−15万円/u)と考えると分かりやすい。

なお、買入限度額はご承知の通り、合理的に買入れても損をしない最高額である。売却限度額は(あまり使われない用語であるが)合理的に売却しても損をしない最低額である。両土地所有者は、この250万円の配分比を巡って、折半だ、面積比だと言って協議することになる。

ここで誤ってはならないのは、配分した額を対象不動産(売買する10u)の正常価格にプラスするのではないということである。

不動産鑑定評価基準では、限定価格を求める場合「かっこ書きで正常価格又は正常賃料である旨を付記してそれらの額を併記」することとされている。しかしそのことに意味があるのは、一括併合の場合に限っての話であり、実は重要なのは「対象不動産の正常価格」ではなくAB両土地の取引前後の「4つの正常価格」だ。それについて次回述べる。


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