BRIEFING.449(2017.11.07)

大阪・兵庫で際立つ財産区の多さ

長野県の蓼科高原(茅野市)の別荘地には、転借地が多い。地元財産区から土地を賃借した開発業者がそれを別荘所有者に転貸しているのである。近くのゴルフ場も財産区からの借地である。

これらの地域は、かつて農用林、薪炭採取地、採草用牧草地や放牧地として利用されてきたが、高度経済成長期にカラマツ造成林とされ、さらに外材の輸入解禁を経て、別荘地やゴルフ場等にされてきたのである。

兵庫県の六甲山(神戸市灘区)の別荘地にも、財産区からの借地や転借地が見られる。ゴルフ場に賃貸したり、バブル期にニュータウン開発用地として売却しそのお金の運用益を得ている財産区もある。「天空の城」で知られる同県の竹田城跡(朝来市)も財産区の所有であるし、同県の城崎温泉(豊岡市)も4つの源泉と6つの外湯を所有・管理している。

財産区とは、特別地方公共団体の一種で「市町村及び特別区の一部で財産を有し若しくは公の施設を設けているもの又は市町村及び特別区の廃置分合若しくは境界変更の場合におけるこの法律若しくはこれに基く政令の定める財産処分に関する協議に基き市町村及び特別区の一部が財産を有し若しくは公の施設を設けるものとなるもの」(地方自治法294条)である。

山林、里山、溜池、用水路、墓地、温泉の源泉地等の土地が登記簿に所有者「○○財産区」として登記されているのがよく見られる。そして、それぞれの財産区には、法人番号も付されている。

そして、先に挙げたような、多くの財産を所有・運用する財産区の住民は、地域の祭りや会館の運営に潤沢な資金をつぎ込むことができる。

なお、その財産区の構成員は合併後の転入者も含む区域内すべての住民である。したがって、引っ越した人はその権利を失い、引っ越して来た人はそれを得るものと考えられる。身近に財産区がない地域の人から見れば、実感の湧かないものであろう。

総務省は「財産区に関する調」(平成28年4月1日)を公表している。それによると、都道府県によって有する財産区の数が極端に異なることが分かる。

たとえば、北海道、埼玉県、佐賀県、鹿児島県、沖縄県には財産区がない。群馬県と宮崎県は1つだけだ。なのに大阪府には655、兵庫県も513でこの2府県が際立っている。東京都は8つだけである。

なお、東京都の8つの内、2つは三原山で有名な大島町、4つは西多摩郡瑞穂町、あとの1つはあきる野市で、いずれも里山や林地の多い地域と思われる。しかし大阪府の場合、大阪市内にも多く、都心である北区にも2つあるから驚く。

かつて生活に欠かせぬ財産として使用収益されてきたものが、今は不要となったにもかかわらず、それが賃貸され用途を変え、思わぬ収益を生んでいるのである。


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