BRIEFING.45(2003.2.6)

借地・借家の必然的契約減価

基礎価格は、積算賃料を求める際の基礎となる価格で、当該賃貸借契約を所与とする対象不動産の最有効使用を前提として把握される価格である。この価格は必ずしも正常価格ではない。なぜならば、その最有効使用は契約で制約された最有効使用でしかないからである。

その制約されている程度に応じた経済価値の減分を契約減価という。

最も一般的な契約減価は、土地の賃貸借における建物の規模・構造の制約である。

さて、借地上の建物が、土地の最有効使用を実現するものであったとしても、借地であれば甘受すべき当然の拘束もある。これは借地の「必然的契約減価」と言えよう。具体的には次のようなものが考えられる。

@建物の担保としての不完全性
A譲渡の困難性
B将来の増改築の困難性
C将来の建替えの困難性
D賃料改定・契約更新の煩わしさ

建物の賃貸借においても、類似の拘束があり、必然的契約減価と言えよう。自由に柱や梁に釘が打てない、クロスを好みのものに張替えられないと、いうのも、金額に表しにくいが必然的契約減価であろう。

ところで、居住用、特に永住型の不動産の鑑定評価において、収益価格が積算価格・比準価格を下回る場合が多い。その理由としては、収益性の重視されない地域に存する不動産であるから等と説明される。しかし実はこの必然的契約減価が原因ではなかろうか。

一方、1Rマンションや事務所においては、借家であっても特に不自由はない。事務所の従業員にとってはどちらでもよいことである。つまり必然的契約減価はほとんど認められない。その結果、収益価格と積算価格・比準価格とが均衡しやすいのではないか。

永住型居住用不動産の収益価格の低位性の原因は、必然的契約減価ではないだろうか。


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