BRIEFING.462(2018.04.05)

不動産の価格と固資・都計税の清算

固定資産税・都市計画税は、地方税法によって毎年1月1日現在の土地建物所有者に課される市町村税(東京特別区においては都税)であり、年の途中で所有者が変わったとしてもその納税義務者に変更はない。

しかし不動産売買市場においては、所有期間に応じてこれらの税を負担すべきとの考え方から、その所有権移転の日を境に、固資・都計税を清算するのが慣習となっている。そして、その基準日を一般には1月1日とし、関西においては4月1日として按分計算することが知られている。

1月1日を基準日とすることは、その日の所有者に納税義務が課せられることと整合性があり分かりやすい。

しかし、実際の納期は、概ね4月、7月、12月、翌年2月の各末日(東京都は6月、9月、12月、翌年2月の各末日)の4期に分割されている。それを考えると、4月1日を基準日とする方が実態に馴染むように思える。

さらに、その年の税額が判明するのが概ね4月1日であるから、1〜3月中の取引においてはこれらの清算をしようにも税額が分からず、やむを得ず前年の税額を当年の税額と見なしたり、後日(税額が判明してから)清算ということになる。評価額の変動が見込まれ、かつ評価替えの年(・・・H24、H27、H30)には税額の予想が難しくやっかいである。

では、実際に清算すべき額は、売買価格に対してどれくらいになるだろうか。

土地の価格を100、建物の価格を100として、1月2日に取引(所有権移転)をした場合を想定して、買主が売主に支払う額を試算してみる。なお、土地は非住宅用地とする。

●土地100×70%(評価割合)×70%(負担調整)×1.7%(税率)=0.833
●建物100×50%(評価割合)         ×1.7%(税率)=0.85

(0.833+0.85)×364日/365日≒1.68

総額200に対して計1.68であるから、0.8%少々である。これが最大であるから、一般的には僅かと言うことができる。但し、土地に対する税相当額と、建物に対する税相当額はハッキリと区分され、税務上はそれぞれの取得価格の一部とみなされる。消費税についても、前者は非課税取引、後者は課税取引(税込み)と判断される。これらは価格の一部なのである。

では、不動産鑑定評価額にこのような清算金も含まれているのだろうか。正常価格の定義「現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」に照らしてどうだろう。

市場では、清算金を考慮せずに価格形成される(契約書作成の段階で意識する)と考えれば含まない、しかし清算が「現実の社会経済情勢の下で」正に行われていると考えれば含むと考えられる。

その点、採用する取引事例について、それが含まれているか否かまでは調査しないことを考えると、答えは「そこまで考えてない」ということになる。前述の試算で見た通り額は些少だ。鑑定評価額については「誤差の範囲内」と言うしかなかろう。


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