BRIEFING.464(2018.04.19)

不動産鑑定評価書の記載事項(1)

不動産鑑定評価書は、不動産の鑑定評価に関する法律(第39条第1項)に基づき不動産鑑定業者が鑑定評価の依頼者に交付する文書である。そしてそこに記載すべき事項は、同法施行規則(第38条第1項)や「不動産鑑定評価基準」(第9章第2節)等に定められている。

前者(以下規則という)は一〜五の5項目、後者(以下基準という)はT〜Ⅻの12項目を挙げており、当然ながら基準は規則を踏まえた上でより詳細でなければならない。しかし両者をよく比較してみると、漢数字とローマ数字の違いはともかくとして、項目の建て方の相違、言い方の相違、順序の相違等があり、何ともスッキリしない、気持ちの悪い対応の仕方であることが分かる。

たとえば、規則一で「・・・評価の対象となった土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の表示」と言っているのに、基準Vでは同旨を「・・・数量等及び対象不動産に係る権利の種類」と言っている。主旨は同じなのだが・・・。

また、規則二で「依頼目的その他その不動産の鑑定評価の条件となった事項」とあるのに、基準はUで「鑑定評価の条件」、Xで「鑑定評価の依頼目的及び依頼目的に対応した条件と価格又は賃料の種類との関連」と述べている。規則は「目的と条件」がセットなのに、基準は「条件」でひとつ、「目的と条件・種類の関連」でひとつになっている。

一方、日本不動産鑑定士協会連合会では、HPで不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価書の記載例(更地の場合)(以下記載例という)を掲載している。

これは当然、規則または基準を基礎に必要な事項を記載していなければならない。

しかしながら、記載例における項目の建て方、言い方、順序は、規則とも基準とも異なり、やはり気持ちの悪い対応の仕方なのである。基準と記載例を比較してみる。

基準Tは「鑑定評価額及び価格又は賃料の種類」であるが、記載例Tは「鑑定評価額」のみで「種類」はVの「鑑定評価の基本的事項」の4に出てくる。

基準Uの「鑑定評価の条件」は、記載例Vの2に出てくる。

基準Yの「価格時点及び鑑定評価を行った年月日」は、記載例Vの3「価格時点」と同Y「鑑定評価を行った年月日」とになぜか分かれて出てくる。

基準Wの「対象不動産の確認に関する事項」と同[の「鑑定評価上の不明事項に係る取扱い及び調査の範囲」は、記載例[の「対象不動産の確認」に該当するが、その内容の対応関係は説明しがたい複雑さである。

鑑定評価書の比較可能性は重要である。しかし上記のような現実では、それが軽視されていると言わねばならない。これでは肝心の「鑑定評価額の決定の理由の要旨」を読む前に疲れてしまう。

次回はこれらを比較し易くまとめた表を提示する。改善の一助となれば幸いである。


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