BRIEFING.466(2018.05.07)

港湾法における構築物と税法上の構築物

港湾法は「(前略)港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発し、及び保全することを目的とする」法律であり、その39条は「臨港地区」内に、商港区、特殊物資港区等、計9種の「分区」を指定することができる旨を定めている。各分区内ではその「目的を著しく阻害する建築物その他の構築物であって、(中略)の条例で定めるものを建設」してはならない。

ここで、税に詳しい方なら「建築物その他の構築物」に違和感を持ったのではないだろうか。この文言からは、港湾法の「建築物」は「構築物」の一種であることがうかがえる。

一方、所得税法他、税法上の「構築物」は「ドック、橋、岸壁、(中略)その他土地に定着する土木設備又は工作物」であり「建物」や「建物附属設備」とは別物である。「建築物」という文言は登場しない。

登録免許税法では「建物」を使いつつ租税特別措置法の同法に関する規定にはなぜか「住宅用家屋」が登場する。その課税標準額を、次に述べる地方税法に委ねている関係だろうか。

税法の中でも地方税法には「建築物」も「構築物」も見当たらず、固定資産税に関する用語の意義及び不動産取得税に関する用語の意義として「家屋」が登場する。

また、建築基準法を見てみると「建築物」は一定の「工作物」であり、「建築設備」を含むものであることが分かる。都市計画法の「建築物」はその定義を準用している。

不動産登記法には「建築物」「構築物」が見当たらず「建造物」「建物」が登場する。

これらの概念を整理すると下表の通りだ。建築物・建物・家屋の3つはほぼ同義で、それを含むものとして工作物・建造物があり、この2つがほぼ同義と見てよいだろう。分かれるのは構築物の認識だ。

 
法律名 構築物等の名称 参照条項
港湾法
 
構築物
 
建築物 法40条1項
その他
所得税法

 
減価
償却
資産
建物及びその附属設備 法2条1項19号
令6条1項1〜2号
 
構築物(一定の土木設備・工作物)
その他
地方税法
固定
資産
土地 法341条1項1〜4号
法73条1項3号
家屋≒建物
償却資産(事業用のみ)
建基法
工作物
建築物 法2条1項1号
建築設備
その他
不登法
 
建造物
 
建物 規則111条
その他
 

この他、海洋構築物等に係る安全水域の設定に関する法律に「海洋構築物等」が見られ、一定の「工作物」と「船舶」(停止して掘削に従事するもの)を指している。また刑法及び文化財保護法には「建造物」が見られるが、その定義は明らかでない。


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