BRIEFING.467(2018.05.16)

土地取引動向調査に見る「強気」と「弱気」

先月16日、国交省不動産市場整備課は「平成29年度土地取引動向調査(第2回調査)」の結果を公表した。この調査は土地市場の動向に大きな影響を及ぼすと考えられる主要な企業を対象として、土地取引などに関する短期的な意向を把握・整理し、簡潔で分かりやすい「先行指標」の作成・提供を目的とするもので、アンケート調査により年2回(8月、2月)行われている。平成12年度から継続的に実施(平成21年度までは「土地投資動向調査」)されてきたものである。

今回公表された調査結果(平成30年2月)では「現在の地価水準の判断」において「高い」が東京23区で59.9%、大阪府内で31.1%と、ともに平成19年9月以来の高水準となったことが分かった(下表@参照)。「低い」はそれぞれ1.1%、2.9%(他は「適正」)であった。

平成20年8月にリーマンショックがあったことは記憶に新しい。「高い」がその直前と同水準にまで上昇したことに加え、政治的に不安定な要因があることを考えると少し気持ちが悪い。

本調査では「1年後の地価水準の予想」も聞いている。その結果を見てみると、「上昇」は東京23区で49.1%、大阪府内で29.1%、「下落」はそれぞれ1.6%、2.9%であった(下表A参照)。まだ強気だ。しかしリーマンショック前の平成19年9月の「上昇」(57.7%、51.0%)、「下落」(2.9%、2.9%)に比べればやや弱気だ。もう「高い」けどあと少し「上昇」といった感覚か。

この間の地価公示価格(下表B参照)を見てみると、平成30年の水準が20年の水準まであと一歩に近づいている。ここからも、もう「高い」けどあと少し「上昇」の感じが窺える。

@土地取引動向「現在の地価水準の判断」(回答割合及びDI(高い−低い))
年度 H19 H20 H21 H22〜27 H28 H29
 
東京
23区
 
高い 60.0 57.0 58.7 50.6 43.3 40.6 省略 50.4 56.3 58.5 59.9
低い 5.9  3.9  5.2 13.2 18.8 22.2 省略 2.9  2.6  0.7  1.1
DI 54.1 53.1 53.5 37.4 24.5 18.4 省略 47.5 53.7 57.8 58.8
大阪
府内
高い 30.6 25.8 27.9 23.4 24.1 15.0 省略 28.2 19.3 24.2 31.1
低い 17.7 22.0 26.5 37.2 37.4 38.1 省略 8.7  6.0  9.1  2.9
DI 12.9 3.8 1.4 -13.8 -13.3 -23.1 省略 19.5 13.3 15.1 28.2
 
A土地取引動向「1年後の地価水準の予想」(回答割合及びDI(上昇−下落))
年度 H19 H20 H21 H22〜27 H28 H29
 
東京
23区
 
上昇 57.7 25.6  7.0  2.1  7.6  8.0 省略 43.4 38.5 42.7 49.1
下落 2.9 17.7 43.8 57.5 32.2 26.1 省略 2.3  3.3  2.3  1.6
DI 54.8  7.9 -36.8 -55.4 -24.6 -18.1 省略 41.1 35.2 40.4 47.5
大阪
府内
上昇 51.0 23.8  2.9  1.4  3.4  5.3 省略 21.4 19.0 25.3 29.1
下落 2.9 16.9 58.8 56.8 39.7 32.7 省略 6.8  1.2  4.0  2.9
DI 48.1  6.9 -55.9 -55.4 -36.3 -27.4 省略 14.6 17.8 21.3 26.2
 
B地価公示価格(S58=100)
年月日 H20.1.1 H21.1.1 H22.1.1 H23〜28 H29.1.1 H30.1.1
東京都
平均
住宅   126.7   118.4   111.1 省略   114.7   117.5
商業   96.3   89.1   81.1 省略   88.3   93.1
大阪府
平均
住宅   99.9   98.0   93.3 省略   88.4   88.5
商業   59.2   57.0   51.9 省略   54.8   57.5
 

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