BRIEFING.472(2018.06.21)

様々な法律によるそれぞれの「警戒区域」

自然災害、原発事故、テロ等により、人の生命や身体に対する危険を防ぐため、行政機関の長は、一定の区域を指定して、その立入を禁じたり制限したりすることができる。その区域を「警戒区域」と言い、様々な法律でそれぞれの「警戒区域」が定められている。

@災害対策基本法(63条)
A原子力災害対策特措法(27条の6)
B国民保護法(114条)
C水防法(21条)
D消防法(23条の2、28条)
E土砂災害対策法(7条、9条)
F津波防災法(53条、72条)
G暴力団対策法(15条の2)

上記@の場合、原則として市町村長が「警戒区域を設定し」、「当該区域への立入を制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずる」ことができる。

A〜Dも概ね同様であるが、Cの場合は市町村長でなく、水防団長、水防団員等が設定・立入制限等を行う。Dには、「火災警戒区域」と「消防警戒区域」とがあり、前者は消防長又は消防署長が、後者は消防吏員又は消防団員が設定・立入制限等をすることになっている。そしてこれらの者がいない場合には警察官等がこれに代わって「職権を行うことができる」ようになっており、緊急時に備えられている。

Eについては「警戒区域」と「特別警戒区域」とがあり、都道府県知事が政令で定める基準に該当するものを指定(設定ではない)する。立入制限等はない。また、事態が発生又は発生しようとしている時に指定するといったものではなく(したがって警察官が指定することもない)、あらかじめよくよく調査した上で指定するという性質のものである。危険の周知、住宅の新築抑制等に重点が置かれている。Fもこれに類似している。なおEの特別警戒区域は全国に多数あるが、Fの特別警戒区域は本年5月8日現在、静岡県伊豆市の1箇所のみである。

Gは公安委員会が3ヶ月以内の期間で定めるもので延長も可能だ。立入制限等はないが「特定抗争指定暴力団等の指定暴力団員」に対し、「事務所を新たに設置すること」や「多数で集合すること」等を禁じている。

これらの他、活火山対策特措法の「警戒地域」(区域ではない)もある。火山活動に対する警戒避難態勢の整備を特に推進すべき地域を国が指定する。

これらとは意味合いが異なるが消防法施行令の「警戒区域」もある。「火災の発生した区域と区別して識別することができる最小単位の区域」(消防法施行令21条2項1号)を言う。もちろん、火災が発生してから慌てて定めるものではなく、熱又は煙の感知器が発報した時に特定できる火災発生場所の範囲のことである。2以上の階に渡らないこと、600u以下(かつ一辺50m以下)とすること等の規定があり、何階のどこで火災が発生したかを正確に把握するため、狭く設定することが望ましい。

人の生命や身体に対する危険を防ぐため、警戒を怠ってはならない。そのためにはまず「警戒区域」の周知が必要である。しかしEFの指定は地価の下落に結びつくこともあり地元には歓迎されない。だが下落の原因は指定そのものではなく、もともと潜在していたリスクによるものであることを理解しなければならない。


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