BRIEFING.480(2018.09.18)

宅配ボックス設置部分の容積率規制

建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分の床面積は、算入しないものとする(建基法第52条第6項)。この7月には、その対象が「共同住宅」だけでなく「共同住宅若しくは老人ホーム等」と改正されている。

さらに、これに伴う改正建基法施行令には、建物用途や設置場所によらず、宅配ボックス設置部分を一定の範囲で容積率規制の対象外とする旨(同施行令第2条第1項第4号)も定められた。改正法では触れていなかったことだ。この25日施行である。

宅配ボックス設置により建築物の延べ面積が増えても、それが近隣の公共施設(道路、公園、下水道等)に負荷をかけることはない。むしろ宅配業者の再配達を減らすことにより、周辺道路の混雑やエネルギーと労働力の浪費を防ぎ、当該業者にとってのみならず、地域にとっても、社会全体にとっても歓迎すべきことである。

さて、冒頭の条項にもある通り、そもそも「共同住宅の共用の廊下」は容積対象外とされていたところである。しかしその共用の廊下の一部に宅配ボックスを設置した場合、あるいは共用廊下とつながった宅配ボックス・コーナーを設けた場合、当該部分についてどう扱うか、従来は判断の分かれるところであった。

これについて国交省は、昨年11月、容積対象外とすることを各都道府県建築行政主務部長他宛に通知している。この通知は、住宅局市街地建築課長名で「共同住宅の共用の廊下に宅配ボックス等を設置した場合の建築基準法第52条第6項の規定の運用について(技術的助言)」として発出され、宅配ボックス及び宅配ボックス・コーナーも「共用の廊下の用に供する部分」とし「延べ面積には算入しないものと扱って差し支えない。」として運用の明確化を図っている。

但し、宅配ボックス・コーナーの入口が扉等で区画されていないこと、すなわち常に共用廊下の空間とつながっていること(防火戸は常時開放タイプならOK)が条件とされている。

今回の改正施行令は、これに加えて、建物用途や設置場所によらず容積対象外とされる点がポイントだ。オフィスや商業施設にも設置が促される。事務所でもSOHOなら留守のことも多いから必要性は高い。上限は延べ面積の1/100(建基法施行令第2条第3項第6号)だがこれだけあれば十分だろう。

なお、昨年11月の通知(共同住宅もしくは老人ホーム等について)で明確になった、宅配ボックス・コーナー全体が容積対象外、となるか否かは明確でない。改正施行令では「宅配ボックス設置部分」としかしていないからだ。どうせなら昨年11月の通知に準じて、事務所・店舗ビルでも容積対象外とすべきだ。それにより、容積フル使用の既存事務所ビル敷地内に、新たに宅配ボックス棟を増築することも可能となる。

では、宅配ボックスとはどのような物をいうのであろうか。改正施行令(第2条第1項第4号)はカッコ書きで「配達された物品(荷受人が不在その他の事由により受け取ることができないものに限る。)の一時保管のための荷受箱」と定義している。利用されるシチュエーションまで限定され拡大解釈を許さないものとなっている。それにしても「荷受人」「荷受箱」とは古くさい。


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