BRIEFING.484(2018.10.18)

続・借家権割合40%の謎

国税庁の財産基本通達第3章94には「借家権の評価」について定められている。その計算に用いられる「借家権割合」は国税局長により定められる。現在その割合は、全国で30%に統一されているが、平成17年まで、なぜか大阪国税局管内(市制地及び路線価地域に限る)だけは40%であったことについて、前回説明し、その理由について次の私案を提示したところである。

@高額償却・敷引き先取り説
A保証金・敷金返還債務持回り説
B更新料なし説

各説の説明は前回に譲るとし、今回はマンションの1室(貸家)を想定し、その検証を試みる。

(1)価額の想定
 土地:敷地の持分20u×20万円/u= 400万円
 建物:専有床面積40u×20万円/u= 800万円
 合計:400万円+800万円=1,200万円(30万円/u)

(2)賃料の想定
 1,200万円×取引利回り10%÷12ヶ月=10万円/月(2,500円/月u)

(3)保証金・敷金及び償却・敷引きの想定
 ●大阪管内H17:保証金・敷金12ヶ月分、その内、
         解約時返還金6ヶ月分(60万円)、償却・敷引き6ヶ月分(60万円)
 ●大阪管内以外:保証金・敷金6ヶ月分(60万円)、別途礼金2ヶ月分(20万円)

(4)貸家建付地価格(借地権割合60%とする)
 ●大阪管内H17:400万円×(1−60%×40%)=304万円
 ●大阪管内以外:400万円×(1−60%×30%)=328万円(差24万円)

(5)貸家価格
 ●大阪管内H17:800万円×(1−40%)=480万円
 ●大阪管内以外:800万円×(1−30%)=560万円(差80万円)

上記(3)の大阪管内H17の解約時返還金は、「敷金返還債務持回り」により売買価格にマイナス要因として織り込まれる。但し債務の履行時期(賃借人の解約・明渡し)は将来なので年3%で6年後として割り引く。その複利現価率及び債務の現在価値は次の通りである。

60万円×0.8375≒50万円

次に(3)の大阪管内H17の償却・解約引きを賃料の先取りと解すと、その額は売買価格から控除すべきと考えられる。大阪管内以外でも同様の性格を持つ礼金があり、その差は次の通りとなる。

60万円−20万円=40万円

この2つの合計は90万円となった。一方、上記(4)の差24万円と(5)の差80万円の合計は104万円だ。近似とは言えないが大差はない。バブル崩壊後、大阪でも@は見られない。Aの習慣は残るものの金額が下落し、売買価格に及ぼす影響は小さくなっている。40%を30%に下げたのは遅ればせながらそれを反映したものと解釈できる。なおBについては前回も触れたが、更新料支払いの前後で若干の相違があるのみと考えられる。

ただ、大阪国税局管内全部が40%であったことについては説明できないのが残念だ。


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