BRIEFING.492(2019.01.22)

中古住宅にローン減税の拡充なし?

消費税率引上げ後の住宅購入等を支援するため、政府は、平成31年10月1日から平成32年12月31日までの間に入居した場合を対象に、住宅借入金等特別控除(住宅ローン減税)の控除期間を3年間延長することとしている。

但し、その3年間については「建物購入価格の消費税2%分の範囲で減税」することとなっている。10%と8%の差以上に減税する必要はないという訳だ。

住宅ローン減税の制度は、所得税について、住宅取得から10年間、毎年末のローン残高の1%を減税するもの。床面積50u以上、自ら居住、借入期間10年以上、年収3,000万円以下等の条件を満たせば、新築・中古を問わず適用対象だ。

今回拡充される制度ならば、仮に11年目のローン残高が1,500万円で、建物購入価格が2,100万円(別途消費税210万円)であったとすると、減税額は次の様に決まる。

@ローン残高1,500万円×1%=15万円
A建物購入価格2,100万円×2%÷3年間=14万円

@>A → いずれか小さい額 → A

ただ、非課税取引で住宅を取得した場合、すなわち(事業者でない)個人からの取得は、この拡充の対象外となる。

ところで、個人間で売買(非課税取引)される住宅は、ほぼ全てが中古住宅と考えられるため、その中古住宅の価格は、消費税率引き上げの影響を受けないと考えてよいだろうか。

思うに、新築住宅市場と中古住宅市場は、別々ではなく、新築市場の価格水準が(建物について)2%上がれば、中古市場の価格水準も牽連して上昇するのではないだろうか。相互に代替・競争の関係があるからである。にもかかわらず中古住宅についてはローン減税拡充なし、であれば、中古住宅の取得に対しブレーキがかけられると見るべきだろう。

今回の住宅ローン減税拡充は、消費税率引上げに伴うものだから、もともと非課税である中古住宅には配慮する必要はない、というのも分かるのだが・・・。

住宅ローン減税の制度自体は(築年数や耐震レベルによる制限はあるものの)中古も対象だ。しかしながら「認定長期優良住宅」と「認定低炭素住宅」についての控除限度額割り増しは新築等(新築又は築後未使用)に限られる。中古には冷たい。固定資産税の優遇も、新築限定だ。

中古住宅の流通促進も重視した税制とすべきだ。しかし新築も中古もでは、税収が確保できない。ならば思い切って新築に対し増税するか、少なくとも今回の消費税率引上げを傍観し、消費税非課税の中古住宅を買いましょうと宣伝する手もあったのではないか。

ドイツでは事実上の「新築制限」があるという。したがって空家率は1%未満だ。日本でも「住宅の総量規制」に言及する人がいる。そろそろ本気で新築住宅にブレーキをかけ、中古への誘導を図るべきではないか。


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