BRIEFING.493(2019.01.29)

免税事業者等の「適格請求書発行事業者」以外の者からの課税仕入れ

本年10月1日の消費税率引き上げに続き、平成35年10月1日からは「適格請求書等保存方式」、いわゆる「インボイス制度」が導入される。これにより「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」等の保存が仕入れ税額控除の要件となる。

「適格請求書」とは、売手が買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類を言う。

但しそれを発行できるのは「適格請求書発行事業者」に限られ、「適格請求書発行事業者」となるためには税務署長に申請してその登録を受けなければならない。そして登録を受けるためには、消費税課税事業者でなければならない。つまり、免税事業者(年間課税売上高1,000万円以下)や消費者は登録を受けられず、「適格請求書発行事業者」になれず、「適格請求書」を発行できないということになる。

その結果、免税事業者等から課税取引によって何かを仕入れても「適格請求書」を受け取れず、それに係る税額控除ができなくなる。なお、現在は、免税事業者等から仕入れた場合でも仕入れ税額控除の対象(消費税法2条1項12号、同法基本通達11-1-3)となる。

平成35年10月以降、仕入れる側からすると、免税事業者等との取引を避けたくなるのは当然だ。そこで免税事業者等は、取引を避けられないために、消費税分安く譲渡(値引き)する必要があるが、これでは免税事業者が不利になる、という懸念がある。

たとえば、免税事業者等が所有する賃貸アパートの一部を事務所として賃貸(年間賃料1,000万円以下)している場合、賃借人になろうとする事業者は「適格請求書」を出せない免税事業者等との契約を避けるであろう。その結果、免税事業者等は市場から淘汰される運命にある。

「適格請求書等保存方式」は、税の公平性確保のため、免税事業者が課税事業者を選択し、いわゆる益税をなくすことを狙ったものである。したがって、免税事業者等の淘汰は、正に国税庁の狙ったところと言うべきである。

なお、この方式の導入には経過措置があり「適格請求書」等がなくても、平成38年9月末までは仕入れ税額の80%、平成41年9月末まではその50%のみが控除できるとされている。

中古住宅を免税事業者等から買い取って再販する場合もある。この場合、土地の譲渡は元々非課税取引だが、建物の譲渡は課税取引であり、その額が大きいため、税額控除ができるか否かは重要な問題である。

この点、今のところ「宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産を購入する取引」は「適格請求書」等がなくても、帳簿のみの保存で仕入れ税額控除が認められる見込みである。したがって、個人から購入した住宅であっても、建物の価格は、従来通り消費税込みと認識することができる。

「適格請求書」を発行せずとも、中古住宅を売る個人が買取り業者に嫌われることはない。


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