BRIEFING.494(2019.02.18)

賃貸住宅の「初期費用」

春は賃貸住宅の契約が増える季節であるが、その契約の際、賃借人には様々な「初期費用」が請求される。

@敷金・保証金
A権利金・礼金
B前払い家賃・前払い共益費
C仲介手数料
D借家人賠償保険料
E家賃保証料

@ABは賃貸人(家主)に、Cは仲介業者に、Dは保険代理店に、Eは保証会社に、それぞれ支払われるが、通常、これらをまとめて仲介業者に託すことになる。また、Cには消費税も必要だ。用途が住宅でなければABにも必要となる。これら以外に見受けられるものとして次の様なものもある。

F鍵交換費用
G清掃・クリーニング代
H消臭・抗菌代
I事務手数料
J書類(文書)作成費

FGについては、賃貸人(または管理会社)が当然やっておくべきこと、すなわちAや月々の家賃に含まれているものだが、賃借人が理解・了解して負担するなら一概に違法な請求とはいえない。Hについても同様だろう。但しこれらの業務をやったように見せかけて実はやっていないというのは問題外である(昨年末の札幌での爆発事故が思い出される)。

これらを請求することは好ましくないが、これらがオプションであり、その分Aや月々の家賃が安く設定されているとすれば、肯定的に捉えることもできる。なぜなら、掃除は自分でするし、鍵も従前のままでよいから少しでも安く・・・という人のニーズに応えることができるからである。

なお、鍵の交換は多くの場合、新品の錠前にする訳ではなく、中古の予備の錠前に取り換えるだけである。従前の錠前は取り外してしばらく保管の上、再利用される。これをローテーションと言う。たとえば50戸のマンションに対し5個程度の予備の錠前を用意しておき、順番に利用してゆくという具合である。予備が1個なら、またすぐに再利用され防犯上不安なので、十分な数の予備が必要だ。また偶然前と同じ部屋に使うことがないよう管理されているかも重要だ。

なお、マンションには左右反転タイプが多い。その場合、玄関ドアの吊り元も左右両タイプが生じ、その錠前も左右両タイプの準備が必要となる。

IはDEの契約に係る手数料だろうか。だがこれらは損保会社や保証会社から仲介業者に支払われているはずで、賃借人が負担すべきものではない。Jは重要事項説明書や賃貸借契約書作成の対価と考えられる。だがこれは仲介手数料に含まれるのが普通で、その作成は仲介業務の根幹を成すものであり、別途請求することには賛成できない。

請求内容に納得できなければ、違う業者・物件を選択することも視野に入れるべきだ。


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