BRIEFING.498(2019.04.08)

今年の地価公示は「地方圏27年ぶり上昇公示」

地価公示法に基づき、平成31年1月1日現在の標準地の正常価格が官報公示された。

それによると、全国・全用途平均は4年連続で上昇し、住宅地は2年連続、商業地は4年連続の上昇となった。

また、地方圏でも全用途平均と住宅地が平成4年以来27年ぶりに上昇に転じている。商業地と工業地は2年連続の上昇である。しかも総じて上昇傾向を強めていると言ってよい。

中でも、札幌・仙台・広島・福岡の地方四市での上昇は著しく、全用途平均で5.9%(前年は4.6%)、住宅地で4.4%(前年は3.3%)、商業地で9.4%(前年は7.9%)の上昇である、三大都市圏におけるそれぞれの変動率よりもはるかに高い率となっている。

変動率(全国全用途)の上位は、昨年に続き1位は北海道虻田郡の倶知安町のポイント。2位も同町、3位は大阪市中央区日本橋、4位は大阪市北区茶屋町、5位は京都市東山区祇園町北側のポイントであった。もちろんインバウンド効果であろう。変動率は、43.6%〜58.8%と極めて大きい。

変動率(全国全用途)の下位、すなわち下落率の上位は、1〜3位を倉敷市真備町のポイントが占める。4位は広島県坂町、5位は同県呉市のポイントだ。変動率は、▲17.4%〜▲14.0%と大きい。言うまでもなく「平成30年7月豪雨」の影響である。

一方、価格(全国全用途)の高順位を見てみると、1〜4位は中央区銀座だ。5位に千代田区丸の内が続く。その価格は5,720〜3,680万円/uである。ただ、その変動率は、4.9%〜3.1%と案外大きくない。

不動産関連団体のトップ等のコメントを集約させていただくと、インバウンド、堅調な事務所需要、低金利、住宅取得支援策等を上昇の要因に揚げ、消費増税や海外情勢、東京五輪後に対する不安に触れつつも、デフレ脱却に言及する等、大きな懸念はないといったところだろうか。

その上で、上昇傾向の全国への波及は見過ごせない動きと見ているようである。

そこで今年の地価公示を「地方圏27年ぶり上昇公示」と名付ける。

ところで、この地価公示は昭和45年の第1回から数えて今年で50回目となる。第1回目の地価公示価格の中から、東京の中央区・千代田区の最高価格、大阪の北区・南区(現中央区)の最高価格を挙げると次の通り。半世紀も前にしては案外高かったという気もするがどうだろう。

●中央区銀座5丁目・220万円/u、●千代田区丸の内2丁目・115万円/u
●北区曽根崎中1丁目・128万円/u、●南区難波新地五番町・123万円/u

なお、公示地価を算定した「鑑定評価書」は今年からウェブ上で初めて全ページ公開されており閲覧可能である。これにより、不動産鑑定制度の信頼性がさらに高まり、令和(パソコンで変換できない!)の時代を迎えても永続することを期待する。


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