BRIEFING.500(2019.05.16)

容積率の格差が地価に及ぼす影響の程度(2)

前回は、容積率の格差が地価にどの程度影響を及ぼすかを、容積率200%、300%、400%の場合の収益価格を、次の3モデルについて比較して検討した。その結果は次の通りである。

賃料単価均一モデル・・・・容積率の上昇率と同率で上昇する。
店舗付事務所ビルモデル・・容積率の上昇率未満の率で上昇する。
マンションモデル・・・・・容積率の上昇率超の率で上昇する。

なお、容積率の上昇による純収益の上昇率は、建物帰属純収益の上昇率が容積率の上昇率と同率であるため、その残余の部分、すなわち土地帰属純収益の上昇率(=収益価格の上昇率)は、下表の通り、容積率の上昇率に対し、方向性が加重されることを指摘しておかねばならない。

容積率(階数)の上昇率に対して・・・

(ア)モデル (イ)モデル (ウ)モデル
賃料・純収益 同率上昇 低率上昇 高率上昇
建築費・建物帰属純収益 同率上昇 同率上昇 同率上昇
土地帰属純収益・収益価格 同率上昇 より低率上昇 より高率上昇

今回は、前回同様の上記3モデルを使って、基本となる賃料単価(3,000円/月u)を上昇させて収益価格と容積率の関係を見てみる。各階の賃料単価のルールは前回同様とする。

モデル 容積率      賃料単価(円/月u) 結論
3,000 3,500 4,000 4,500 5,000
(ア) 200% 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 格差不変
300% 1.50 1.50 1.50 1.50 1.50
400% 2.00 2.00 2.00 2.00 2.00
(イ) 200% 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 格差拡大
300% 1.32 1.34 1.35 1.36 1.36
400% 1.64 1.68 1.70 1.72 1.73
(ウ) 200% 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 格差縮小
300% 1.53 1.53 1.53 1.52 1.52
400% 2.09 2.08 2.07 2.06 2.06

賃料水準が高いほど、容積率の上昇に対し収益価格の上昇率は(ア)不変、(イ)拡大、(ウ)縮小、という結果になった。直感的には首肯しにくい結論である。逆ではないかとも思えるが、これは次のように説明できる。

賃料水準が高いと、純収益に占める土地帰属純収益の割合が高まる結果、「方向性の加重」の効果が薄まり、(イ)では「より低率上昇」が「低率上昇」に近づき、(ウ)では「より効率上昇」が「高率上昇」に近づく。そのため、(イ)では上表の格差が拡大(純収益の増加率に近づいた)し、(ウ)では上表の格差が縮小(同)したのである。

あくまでもモデルの想定に基づく結論だが、確かな事実である。建物の賃料は、実質的には「建物およびその敷地」の賃料であり、その水準の上昇分を建物に帰属する部分には割り当てず、全て土地に帰属する部分に割り当てたことが背景にあると見ることもできる。


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