BRIEFING.501(2019.05.23)

容積率の格差が地価に及ぼす影響の程度(3)

前々回は、容積率の格差が地価にどの程度影響を及ぼすかを、容積率200%、300%、400%の場合の収益価格を、次の3モデルで比較検討し、前回はそれに加えて賃料水準の上昇でその関係がどう変わるかを見た。今回は、賃料を元に戻し、建築費を上昇させてみる。モデルはこれまで同様、次の3つだ。

賃料単価均一モデル・・・・容積率の上昇率と同率で上昇する。
店舗付事務所ビルモデル・・容積率の上昇率未満の率で上昇する。
マンションモデル・・・・・容積率の上昇率超の率で上昇する。

建築費単価(20万円/u)を上昇させて収益価格と容積率の関係を見てみる。

モデル 容積率    建築費単価(万円/u) 結論
20 22 24 26 28
(ア) 200% 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 格差不変
300% 1.50 1.50 1.50 1.50 1.50
400% 2.00 2.00 2.00 2.00 2.00
(イ) 200% 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 格差縮小
300% 1.32 1.30 1.28 1.26 1.23
400% 1.64 1.61 1.57 1.52 1.47
(ウ) 200% 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 格差拡大
300% 1.53 1.54 1.54 1.55 1.57
400% 2.09 2.10 2.12 2.14 2.18

結論は、賃料水準を上昇させた場合と逆になった。やはりピンとこない結論だが、その理由は前回同様に説明できる。

建築費が高いと、純収益に占める土地帰属純収益の割合が低くなる結果、「方向性の加重」の効果が強化され、(イ)では「より低率上昇」が「さらにより低率上昇」になり、(ウ)では「より高率上昇」が「さらにより高率上昇」になった。そのため、(イ)では上表の格差が縮小(純収益の増加率から遠ざかった)し、(ウ)では上表の格差が拡大(同)したのである。

純収益に占める土地帰属純収益の割合の増減が、モデルの特徴(土地帰属純収益の上昇率が、容積率の上昇率より低いか高いか)を緩和・強化する、と言うことができる。

ここまで、3つのモデルについて容積率と収益価格との関係を、賃料水準、建築費を変動させて見てきた。しかしモデルを単純化し、変動させる数値以外の採用数値を統一した点には批判もあろう。たとえば3つのモデルの3つの容積率において、すべて同一の有効率、同一の経費率、同一の還元利回りでよいのか等については妥当でないかも知れない。だが、これにより不動産の価格の特徴の一面をあぶり出すことができた。

また、得られた結果は、感覚的には腑に落ちないものであったが、その理由を分析してみればなるほどと言えるものだろう。市場の感覚としてはどうだろう。分譲の場合とは違うかも知れないが、一種何万円と言われたマンション用地価格の把握の仕方との整合性はどうだろうか。

不動産鑑定評価において土地の比準価格を求める場合、近隣地域と容積率の異なる地域の取引事例との間で地域要因比較を行うことも多い。その格差率の査定に際し、参考となれば幸いである。


BRIEFING目次へ戻る