BRIEFING.503(2019.06.14)

リバースモーゲージ(ノンリコース型)とリースバック

リバースモーゲージ(RM)は、所有している自宅を担保に金融機関から生活費等の融資を受け、金利のみを支払いつつ、死後に自宅を売却して元金を一括返済する仕組み(元利とも一括返済タイプもあり)である。多くの金融機関が提供しているサービスだ。

これに対しリースバック(LB)は、引き続き賃借(多くは定期借家)して住み続けることを条件に自宅を不動産業者等に売却し、売却代金を生活費等に充て、賃料を支払いつつ、死後に賃貸借契約を解約するという仕組みである。不動産会社等が提供している。

所有している自宅を、後で売る(RM)か、先に売る(LB)かが大きな違いである。前者は、金銭消費貸借の後、最後に不動産売買、後者は、まず不動産売買の後、すぐに不動産賃貸借という順番になる。住み続ける権利が、所有権(担保権付)か賃借権かの相違はあるものの、引き続き自宅に住み続けられるという点は大きな共通の利点だ。

さて、両制度の本質的な違いは、不動産価値の下落リスクを移転するか否かということであろう。

RMでは死ぬまでそのリスクを負い続けなければならないが、LBなら、先に売ってしまうので、後は自宅の価値が下がっても全く困らないし、むしろ協議の上、賃料の改定(値下げ)を求めることができる場合もあり、LBにとって価値下落はありがたいぐらいだ。

しかし、RMには、自宅を売却しても返済ができない場合に、残債を相続人が返済しなければならないタイプ(リコース型)以外に、売却代金以上の返済はしなくてよいタイプ(ノンリコース型)もあり、後者はこの欠点を緩和したものと見ることができる。ノンリコース型RMなら、自宅の価値が大きく下落していても、最後に自宅を差し出せばそれでOKだ。価値が下がっていても涼しい顔をしていられる。死後に元金一括返済とは言っても、実質的には自宅を返すのと変わりなく、不動産賃貸借契約の終了・明渡しに類似すると考えることができる。

また、住んでいる間は、金利のみ払えばいい、すなわち借りている物(元金)の借り賃を毎月払えということであるから、この点は不動産賃貸借契約の賃料の支払いに類似する。金銭の借り賃か、不動産の借り賃かの違いである。そして、RMの金利は変動金利であるが、不動産の賃料も原則は経済情勢等に応じて「協議の上」増減可能であるから、この点も類似する。但し、金利は金融機関が一方的に改定するのに対し、賃料は「協議の上」(しかも賃借人保護の観点から上方に硬直的)である点は相違する。

このように考えると、ノンリコース型のRMは、実質的にはお金を借りているのか、不動産を借りているのか、あいまいなように思えてくる。不動産価値の下落リスクを一部移転したという点で、LBに近いRMと言える。ただ、維持管理費、固定資産税等を負担しなければならないという点を考えれば、やはり不動産(自宅)は所有しており、金銭を借りているのだと実感することができる。

両制度にはこのような本質的類似点と相違点がある。加えて、どちらも長生きがリスクであるという共通点がある。利用を検討する方は、まずこれらを理解の上、詳細な条件を比較検討すべきである。

住宅金融支援機構が実施する住宅融資保険を活用したRM型住宅ローン「リバース60」をご存じだろうか。「リバース60」は60歳以上の人が利用可能で、融資額の掛け目は評価額の50%程度だ。50歳から利用できる「リバース50」もあるがその掛け目は30%程度と低い。若い方がなぜ・・・とも思ってしまうが、若い方が長く生きるから、不動産価値の下落リスクを勘案して、という訳か。改めて長生きがリスクであることに気付かされる。


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