BRIEFING.504(2019.06.27)

標準的な画地の「選定」と「想定」

地価公示の「標準地」、地価調査の「基準地」は、その地域における標準的な画地であり、代表性・中庸性・安定性・確定性等について点検の上、選定されている。そしてその価格は、それぞれの地域における地価水準を指し示しているものと考えられる。

このように、現実の利用単位を踏まえた標準的な画地の定め方を「選定主義」と呼ぶこととしよう。

しかし、全てにおいて標準的な画地というものは案外見当たらない。規模、形状、利用状況が標準的なものは角地しかないとか、中間画地で規模も利用状況も標準的なのを探すと不整地しかない、といった具合で、現実を踏まえると限界がある。

実際「標準地」「基準地」の中にはそういったものも珍しくない。そうするとその価格は、地域の地価水準と異なるものとなる。それが角地であるなら、地域の地価水準はもう少し低いだろうし、不整形地であるなら、その逆である。これは「選定主義」の欠点である。

そこで地価公示・地価調査では「標準地」「基準地」にも実は「個別性」があって真に標準的な画地は(現実には存在しないものの)こうですよと表示している。それはその概要、さらには鑑定評価書まで見なくては判明しない。そして(詳しい説明は省くが)その「個別性」を踏まえて「標準化補正」を行い真の標準的画地の価格、すなわち地域の地価水準を知ることができる。

この点、固定資産税課税のための固定資産評価においては、想定の「標準宅地」を設けることがある。利用の単位を無視して1画地の一部を「標準宅地」としたり、隣の画地の一部を含めて「標準宅地」としたりするのである。これは「想定画地」と呼ばれる。但し「想定」でない画地も「想定」の画地も、なお残る「個別性」(「方位」等)があるため、それを考慮する前の「標準価格」と考慮した後の「鑑定評価額」とが、鑑定評価書には併記されている。

また一般の不動産鑑定評価においては、対象不動産の価格を求める前に「標準画地」の価格を求めるが、その際の「標準画地」は「想定画地」とするのが通常である。現実の区画割り、利用単位を無視し、この辺りにある間口何m、奥行何mの長方形の画地、と「想定」するのである。これを「想定主義」と呼ぶこととする。「選定」するのではなく「想定」するのである。

つまり、一般の不動産鑑定評価は「想定主義」、固定資産評価は「選定主義」に「想定主義」も併用、地価公示・地価調査は「選定主義」だがその欠点を補うため「想定主義」も補足的に取り入れていると言うことができる。

「選定主義」の欠点は、先ほども触れた通り、標準的な画地として「選択」した画地の価格が地域の地価水準と異なる場合があるという点である。「想定主義」ならそれはない。逆に地域の地価水準を具体化するような画地を標準画地と「想定」すると言うこともできる。

ところが、地域によっては、大部分の画地が角地であったり、全てが不整形の傾斜地であったり、といったこともある。このような場合「想定主義」で「想定」すべき標準的な画地は・・・。前者の場合、中間画地を標準的な画地と「想定」すればその価格は地域の(角地を前提とした)地価水準を下回ることになろう。後者の場合、長方形状の平坦地と「想定」したら、その価格は地域の(不整形の傾斜地を前提とした)地価水準を大きく上回るものとなろう。

通常、不動産鑑定評価における標準画地の価格は、対象不動産の価格を求める際の途中経過のようなもので、それ自体が重視されるものではないため、それが地域の地価水準と乖離していても問題はない。しかし、地域の地価水準自体が重要となる場合、その「想定」の当否は重要である。


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