BRIEFING.521(2020.03.31)

今年の地価公示は「オリンピック公示」

地価公示法に基づき今年も1月1日現在の標準地の正常価格が官報公示された。

それによると、全国・全用途平均は5年連続で上昇し、住宅地は3年連続、商業地は5年連続、工業地は4年連続の上昇となった。しかも上昇基調は強まっている。

堅調なオフィス・ホテル・流通倉庫需要、そしてオリンピック・パラリンピックへの期待も後押ししたことだろう。

なお、標準地の総数は26,000地点。うち福島第一原発事故の影響で7 地点は調査を休止している。

さて、上昇率の上位を見てみると、トップは北海道・倶知安町のポイントで57.5%。以下那覇市久茂地1丁目(45.9%)、大阪市中央区宗右衛門町(44.9%)、倶知安町(44.0%)、那覇市久茂地3丁目(41.4%)と続く。6位は観光関連産業が伸びる宮古島市平良(41.4%)、7位は再開発構想が進む豊中市新千里東町(41.3%)だった。

但しトップのポイントの地価は10万円/uと安い。

次に、価格の上位を見てみると、トップから4位まで全て銀座で、山野楽器銀座本店(5,770万円/u)、対鶴館ビル、明治屋銀座ビル、ZARA、と続く。5位は新宿3丁目のM-SQUARE、6位は丸の内ビルディング、7位は新宿高野第二ビルだった。

但しトップ4の上昇率は0.9〜1.7%と僅かである。

地価も経済も「オリンピックまでは大丈夫」と言われてきた。いよいよその時期が迫り、地価の推移も慎重になってきた、というところか。またオリンピックは建築費の上昇ももたらした。それは地価(収益価格)に対しマイナスに働くことも指摘しておかねばならない。

そこで今年の地価公示を「オリンピック公示」と名付ける。

さて、冒頭の繰り返しになるが、これらの地価の価格時点は1月1日である。

中国・武漢での原因不明肺炎の事例がWHO中国事務所に通知されたのは2019年12月31日。感染源とされる市場が閉鎖されたのが1月1日だ。

これを受け、日本の厚労省健康局が、「中華人民共和国湖北省武漢における原因不明肺炎の発生について」を公表したのが1月6日。その通知の一部を抜き出してみると「死亡例なし」「ヒト-ヒト感染の明らかな証拠はない」「海鮮市場(華南海鮮城)と関連した症例が多い」といった具合。

その頃を基準日とする評価であることを踏まえねばならない。

しかし現状は説明するまでもない。訪日観光客は0に等しくホテルも飲食店もガラガラ、オリンピック・パラリンピックは延期だ。

今更「オリンピック公示」では違和感もあろう。的外れかもしれぬ。しかし価格時点の状況を思い起こして当時の地価を俯瞰してみてほしい。来年の地価公示は如何に。


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