BRIEFING.523(2020.04.23)

改正民法施行後の賃貸借契約更新と連帯保証人

改正民法が施行されたが、不動産関連の大きなポイントの1つは、不動産賃貸借契約における連帯保証人の保護についてである。すなわち、賃借人から委託を受けた個人が連帯保証人となって、賃貸人との間で保証契約を締結する場合、負担する債務の上限「極度額」を定めておかなければ、保証契約が無効、という規定である。

これまで「極度額」を定める必要はなかったが、それは連帯保証人が無制限に保証債務を負担するということであり、連帯保証人にとってあまりに酷である。そこで「極度額」を定めて保護しようというのが本件改正の趣旨である。改正法施行後の新たな契約について適用される。

では、改正法施行前からの賃貸借契約が、施行後に期間満了によって更新された場合、それに付随する保証契約に影響はあるだろうか。その時点で「極度額」を定めなければ、保証契約は無効になってしまうのだろうか。関係者・有識者の間では、早くから次の両説があった。

無効説:更新されたのだから「極度額」を定めねば無効である。
有効説:賃貸借契約更新後も保証契約は従前のままで有効である。

この点、法務省の審議官・参事官の編著による「一問一答民法(債権関係)改正」(2018年3月)によると「賃貸借契約の更新時に新たな保証契約が締結され、または合意によって保証契約が更新された場合には、この保証については保証に関する新法の規定が適用される」とされている。これは無効説(法定更新の場合を除く)と受け取れる見解である。

しかしこう解釈されれば、多くの賃貸借契約で更新に際し協議して「極度額」を定める必要がでてくる。協議がまとまらなければどうなるのか、保証契約は無効となるのか、それなら信頼関係が破壊されたとして賃貸借契約も更新拒絶だ・・・と面倒なことになりかねない。

これに関し、厚労省からの質問に対する法務省の回答(2019年9月)が公開されている。

それによると「施行日後に保証契約が自動更新された場合には、その際に極度額を設定しなければ当該保証契約は無効となります。」としつつ「他方で、保証契約が賃貸借契約更新後に発生する賃料も保証する趣旨で締結されており、施行日後に賃貸借契約が自動更新されたが、保証契約については更新がされずに改正前に締結された契約がそのまま継続している場合には、当該保証契約については改正前の民法が適用されるため、極度額が設定されていなくともその保証契約は無効とはなりません。」となっている。

@賃貸借契約は自動更新、A更新後の賃料も保証する趣旨の保証契約、B保証契約は更新されておらず継続、という条件が整えば、有効説と解釈できる。しかし@が賃料改定を伴う合意更新であったらダメなのか、Aの趣旨が明確でない場合はどうか、Bも更新か継続か明確でない場合は・・・。

この点、(公社)全国宅地建物取引業協会連合会の「民法改正に係る契約書改定ガイドブック」(2019年10月)は、さらに踏み込んで「法定更新か合意更新かにかかわらず、賃貸借が更新されれば原則として保証契約は継続する」としている。

法務省の解釈が絶対ではないが・・・。ちなみにネット上の多数説は「更新の覚書には貸人・賃借人のみ記名押印し敢えて連帯保証人を外すことで保証契約が継続できる」というもののようである。


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