BRIEFING.524(2020.05.07)

小笠原村の監視区域再指定

土地取引を規制する法律として国土利用計画法がある。規制のメニューは次表の通りだ。

右3区域以外
(事後届出制)
@注視区域
(事前届出制)
A監視区域
(事前届出制)
B規制区域
(許可制)
根拠  23条〜27条の2 27条の3〜5 27条の6〜9 12条〜22条
対象
面積(u)
市街化区域    2,000u以上
その他の都計区域 5,000u以上
都計区域外    10,000u以上
知事等が定める
面積(左の面積
未満)以上
面積要件
なし
 

国土交通省HP掲載の表を簡略化した。

しかし、実はこれまで@Bは指定されたことがなく、指定実績があるのはAのみだ。バブル期以降、全国各地に指定され、崩壊後に順次解除され、3つの国会等移転先候補地周辺に残っていたものも2003年から2005年にかけて解除されており、今では全国で1か所だけだ。

その1か所が東京都の小笠原村である。指定区域は同村の都市計画区域(父島、母島)、届出対象面積は500u以上だ。1990(H2)年1月5日に初めて指定され、5年間の指定期間満了の都度、再指定が繰り返されてきたが、今回(2020(R2)年1月5日)7回目の指定があった。これで計35年間となる。

ところで、監視区域は「地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあり、適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域」について5年以内の期間で指定される。

しかし、同村内の地価公示標準地、例えば【小笠原5-1】の価格の推移を見てみると次の通り、上昇したのは2001年と2002年の2回だけ。「急激に上昇」どころか近年は安定していると言うべきだ。そうすると「上昇するおそれがあり」と判断していることになる。

1997〜2000年 54,000円/u
2001年 57,000円/u(+3.3%)
2002年 63,000円/u(+6.6%)
2003〜2020年 63,000円/u

東京都は、指定の理由を次の通り説明している(一部省略した)。

@監視区域指定以来、地価は横ばいで推移し、下落した他の島しょと比較すると地価が高い。
A民有地面積の割合が約2割と少なく外部資本が参入すると地価が急上昇する可能性が高い。
B世界遺産登録後観光客が増加、一旦減少したがH28年の定期航路貨客船新造以降再び増加。
C村においても再指定が必要と考えている。

確かに、2020年の都の公示価格(全用途平均)が1990年のそれに比べ未だ大きく下回っているのに、小笠原村では上回っており、その結果、八丈町や大島町、三宅村に比べて地価は2〜5倍だ。民有地率も19%で、八丈町(58%)、大島町(47%)、三宅村(51%)の半分以下。「上昇するおそれ」の下地はある。

それに加え、小池都知事が小笠原諸島返還50周年式典(2018年6月)で、懸案の飛行場建設に言及している点は注目だ。環境への影響を抑えて、従来案の1,200m滑走路を1,000〜800m程度とする案を検討中と言う。すでに都の2018年度予算には1.2億円、2019年度には4.9億円の調査費も計上されている。ここまで具体化すれば「上昇するおそれ」は間違いなさそうだ。


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