BRIEFING.53(2003.4.3)

継続賃料評価と土壌汚染(1)

本年施行された改正不動産鑑定評価基準のポイントのひとつは、これまで暗黙のうちに考慮外とされてきた、土壌汚染の可能性についての調査義務が明確化されたという点である。汚染の可能性があれば、原則として他の専門家の調査結果等を活用して評価に反映させることが求められている。

では、賃料改定に際し、当初からあった土壌汚染が発覚した場合、継続賃料の評価上、基礎価格の下落時点をどう考えるべきか。次の2説を提起し検討する。

@判明時点説・・・判明した時点で初めて下落した。

A汚染時点説・・・当初から汚染があった分、安かった。

当初から隠れた瑕疵があったと考えればAの立場を取るべきであろう。当事者が知らなかっただけで、最初から割高に借りていた(貸していた)、ということになる。

そこでこれが継続賃料の評価手法である利回り法、スライド法にどのような影響があるか、次の例で試算してみる。汚染を考慮しない基礎価格は前回改定時で1,000、今回は800に下落しているものとする。汚染による価格の下落は−400とした。

  時 点  前回改定時   今回改定時
汚染による下落  無視  考慮  無視  考慮
基礎価格  1,000  600   800  400
賃料(実質賃料)      50      50
必要諸経費等      10      9
純賃料      40      41
純賃料利回り   4.0%  6.7%  5.1%  10.3%
スライド指数      100      98

@判明時点説
・利回り法  400×4.0%+9=25(−50%)
・スライド法 40×98/100+9≒48(−4%)

A汚染時点説
・利回り法  400×6.7%+9=36(−28%)
・スライド法 40×98/100+9≒48(−4%)

一見賃借人有利かと思えるA説より、@説の方が賃借人保護に資するということになる。次回はさらに検討を加える。


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